いびきと落ち舌/医学博士照山裕子
「100歳まで食べられる歯と口の話」<22> 若い頃はそうではなかったのに、年齢を重ねると「いびきがうるさいと家族に言われた」「自分のいびきで起きてしまう」といった悩みを持つ方が増えます。いびきとは、何らかの原因で空気の通り道である気道が狭まることで、呼吸の度に気道粘膜が震えて生じる異常な呼吸音を指します。<1>骨格(顎が小さい、首が太くて短い)<2>喉の形状(扁桃=へんとう=腺が大きい、口蓋垂が長くて大きい)<3>肥満(顎や首周りに脂肪がついている)などの要因に加え、<4>舌の筋力低下によっても生じます。特に加齢によって増えるのは<4>です。 男性と女性を比較すると、男性の方が舌が大きく気道が閉塞(へいそく)しやすいという体形の違いがあり、全体のパーセンテージをみると男性の方がいびきをかく比率が高いようです。女性の場合は顎が小さいことに加えて、ホルモンバランスの変化もいびきを引き起こす原因になります。 女性ホルモンの一種であるエストロゲンには、舌の筋肉を緊張させ、理想的な位置に保つ働きがあります。更年期にさしかかるとエストロゲンの分泌が減少するため、舌のゆるみが生じて落ち舌になりやすい傾向にあります。エストロゲンには脂肪量が増えすぎないように調整し、食欲を抑制する働きもあるため、減少によって肥満が進むとさらにいびきのリスクが増えるとも考えられています。首周りに脂肪がつくとさらに気道が狭まるので、いびきは当然悪化します。 他人から指摘されなければ気づきにくい部分でもありますが、放置すると命にかかわるほどの危険につながるのがいびきの怖さです。日中も眠くてたまらない、集中力が途切れやすい、起きてからも頭がぼーっとする、疲れが取れにくい、起床時に口がカラカラ等の自覚症状がある方は、1度医療機関に相談してみると良いでしょう。予防のためには落ち舌改善のトレーニングもおすすめです。