「一年で一番忙しい時に浜を閉めるのか」と猛反対され… 和歌山・白浜町長が語る苦渋の7日間 南海トラフ臨時情報でビーチ封鎖、花火大会中止、経済損失「5億円」
損害は5億円
長い一週間が終わった。 地震は発生せず、人命は失われなかった。しかし、大きな代償も払った。白良浜は年間60万人が訪れる景勝地で、中止した花火大会も例年、3~4万人もの人出となる。 「旅館組合の計算によれば、1週間で5億円の損失が出たと。この数字については精査が必要ですが、これに加えて飲食業などのマイナス分もありますから、損失が大きいものになるのは間違いありません」 町の経済にとっては大きな痛手だが、この損失は業者が被ることになるのか。 「今、一番頭を悩ませているのがこの点です。情報を出したのは国ですが、それについての対応をしたのはそれぞれの自治体です。浜を閉鎖するという決断は町が独自に行ったことですから、国がその補填をするのは難しい。その点が今回とコロナ禍の時とは異なるところです。町として、金融機関に、損失が出た業者への無利子での融資をお願いするとか、GOTOトラベルのような観光振興策を取れないかなど、今後、対応策を関係各所と検討していきます」 町長は21~22日に上京して観光庁などを訪れ、観光客回復への施策について陳情をしてきたという。 改めて今回の決断をどう思うのか。 「間違ってはいかなかったと思います。もちろん“やり過ぎだ”とのご批判もいただきましたが、概ね町民の方々からは“良かった”との評価をいただいているのはありがたいことです。一方で、国が情報を出したら出しっぱなしという姿勢だと、我々自治体としては対応に困ってしまうと感じたのは事実です」 和歌山県の岸本周平知事は20日、定例会見でこう述べている。「県によってイベントをやったところ、中止したところ、延期したところがあった。同じ南海トラフの地域であれば、一定の対応をするのが本来ではないか。しかし、その物差しがなかった。統一の物差しを国に作っていただきたい」。 町長は言う。 「我々の気持ちを代弁してくれたと思います。今は、国は情報を出すものの、その後の対応は自治体任せになってしまっている。だからこちらも苦渋の決断を迫られる結果となりました。その実情を理解してほしい。今回を機に、臨時情報の発信の方法を検証し、合わせて自治体が取るべき具体的な対応について、その指針を示してほしいと思います。とにかくこの一週間、何も起きなかったことが一番でした。そしてさまざまな意味で勉強になった一週間でした」 デイリー新潮編集部
新潮社