「死ぬまでできたらいいな」74歳の店主が営む小さな食堂 朝定食や弁当で“おふくろの味”を提供「料理もお客さんとしゃべるのも好きや」
朝に来店した客の「昼の弁当」も作る!
午前8時。淑美さんがおにぎりを握っていました。 (山縣淑美さん)「(Q何を作っている?)彼の弁当」 (客)「僕のお弁当を作ってもらっています。朝ごはん食べながらお昼ごはん作ってもらって、お昼の時間におばちゃんのお弁当を食べています。(Q仕事は?)児童館の職員をしています。子どもたちと体を使って遊んでいるので、おなかがすくのでお昼にはたっぷり食べて備えています。いつも開けるまで何が入っているかわからないです。たくさん食べられるように大きな弁当箱を持ってきています」
趣味は川柳「車椅子 押して夫と 影一つ」 夫の介護生活を詠んだものも
淑美さんは今、店の2階で猫と一緒に暮らしています。元々、夫・勝利さんと神戸市長田区で寿司店を営んでいました。転機は「阪神・淡路大震災」。被災して店を閉めることになったのです。その後、病を患った勝利さんを介護しながら、この店を始めました。 (山縣淑美さん)「働きに行くと夫を施設に預けないといけないでしょ。それが嫌だったので、自分で見ながら。やっぱりなくてはならない存在で、夫も私を頼っているし、私も夫がいなかったら困るような感じやね。精神的に支えがなかったらしんどいから」 6年前に亡くなった勝利さんと共通の趣味は川柳でした。介護生活を詠んだものもあります。 『車椅子 押して夫と 影一つ 淑美』 『生きてるかーと 今朝も階下で 妻が呼ぶ 勝利』 (山縣淑美さん)「私が早く起きるから、夫が後で起きるでしょ。私が『お父さん生きとー?』と言ったら『生きとー』って。それから着替えさせて下に連れておりて、ここでご飯食べさせて、また2階に連れて上がってという生活」
「毎日来ている。心の休みどころやな」1人暮らしの高齢者も支える
夫を支えてきた淑美さん。今は、1人で暮らす高齢者を支えています。 (山縣淑美さん)「(彼女は)80歳まで助産師さんしていた。すごいでしょ。お話聞いてあげてください。おしゃべりなんだから」 (客)「おしゃべりは好きやけどな。(Q毎日来る?)毎日来ています。料理をお持ち帰りする。おいしそうでしょ。(Qこの店はどういう場所?)心の休みどころやな。何でもしゃべっているから、家のことも。きょうはお休みだけど、もう1人男の人が来て、3人で何でもしゃべっている。それはありがたいよ」 (淑美さん)「散髪行ったほうがええで」 (客)「行かないかんと思ってる。散髪行く」 またあしたもおしゃべりに来ると約束して店をあとにしました。 午前10時半、淑美さんが何やら準備をしています。 (山縣淑美さん)「(Qそれは何ですか?)これは今から配達に行くお弁当。(Q配達もする?)義理と人情に駆られています」 少しの間、店は常連客に任せ、バイクで配達に行きます。