「イライラや落ち込みが激しくなった」54歳男性が診断された“うつ病ではない”病気の正体
職場では降格人事、給与カット、ハラスメント告発などのリスクにさらされ、家庭では夫婦不和、介護、更年期障害や健康不安に苛まれる50代たち。現代の中高年を襲う強烈な孤独感と不安の実態に迫った。 ⇒【写真】テストステロンの分泌を促すため「筋トレノート」に目標とポジティブな言葉を書いている
更年期障害からうつ状態に…
医療系企業の広報サポート業を営む長谷川幸次さん(54歳)は更年期障害からうつ状態に陥ったひとりだ。 「4年ほど前、取引先のコロナ倒産がきっかけで、今いる会社が約3000万円の赤字を抱えることに。以来、業績悪化に伴ってイライラや落ち込みが激しくなったんです」 自粛生活が続き、家族にツラく当たることが増えたそう。 「やる気が出ず、常に『何をやってもうまくいかないだろう』という不安に苛まれるんです。当時は性欲もめっきり減退してしまいました」 そんなある日、知り合いの医師に話をすると更年期障害の疑いを指摘されたという。 「すぐに医療機関を受診。血液検査をしたら男性ホルモンの数値が基準値の半分以下と判明。『重度の男性更年期症状』と診断されました」 その後、長谷川さんは50歳でテストステロン補充療法を開始する。 「3か月後には症状の改善が見られました。さらにテストステロンの分泌を促すため筋トレも開始。今も週2~3回、近所のジムに通っています」 回復した現在はピンチをチャンスに変えるごとく、SNSなどで男性の更年期障害について発信をしているという。
“更年期”と“うつ”の両方の線で検査を
こうした男性更年期障害とうつ病はどう見分ければよいのか。高齢者専門の精神科医・和田秀樹氏は「更年期障害とうつの区別は非常に難しい」と前置きをしつつ語る。 「そもそも更年期障害はホルモンバランスが崩れて起こるもの。男性の場合は40代から70代にかけて男性ホルモンが減少。一定値より少なくなると男性更年期障害と診断されます。症状は長谷川さんのように意欲や性欲が低下。記憶力や判断力も鈍くなる。一方でうつ病の場合は食欲や睡眠の異常が目立ちますが、心身への異常を感じたら両方の線で検査をするのが得策です」 ではもし更年期障害になってしまったらどうすればよいのだろうか。 「更年期障害は男性ホルモンを足せばよくなります。実は精神疾患に対しても年を取ってからのほうが、薬は効きやすいんです。また、予防策としては肉を中心にタンパク質を取ること。コレステロールが精神の安定に必要なセロトニンという伝達物質を増やし、性ホルモンの材料にもなります」 男性ホルモンを減らさないためには日々のケアも必要だ。 「性行為や自分ででも男性ホルモンが分泌されるような習慣を心がけることが一番の更年期障害対策になります」 肉とHこそ中年の男性更年期障害に対抗しうる大きな武器なのだ。
有効な更年期障害対策
①積極的な肉食 ②性欲をかき立てる 【精神科医 和田秀樹氏】 1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。和田秀樹こころと体のクリニック院長。30年以上にわたり、高齢者医療に携わる 取材・文/週刊SPA!編集部
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