ついにウクライナと交戦、北朝鮮軍に"頼る”ロシアが過去からの姿勢を激変させた事情、北朝鮮の利点は?
プーチンの訪朝と条約の調印は、ロシアが北朝鮮に何を提供する可能性があるか、特に北朝鮮の核・長距離弾道ミサイル計画を強化するためにロシアが提供する可能性のある技術的・軍事的支援について、広範な議論を巻き起こした。 北朝鮮が核兵器運搬手段を完成させるのを事実上手助けするようなロシアの援助は、原則的に核拡散に反対するだけでなく、技術の流出を積極的に防ごうとした過去のロシアの政策から大きく逸脱することになる。
「ロシアは長年、核不拡散を支持してきた」と、現在スウェーデン国際問題研究所に籍を置くロシアの軍事アナリスト、アレクサンドル・ゴルツは筆者に語った。「しかし、今や状況は劇的に変わった。西側諸国への威嚇が主目的となってしまった」。 ゴルツは、プーチンが訪朝の際に、西側諸国がウクライナに長距離兵器を供給したことに対抗して、ロシアがアメリカの敵に「敏感な」軍事援助を提供するかもしれないと警告的な発言をしたことを例に挙げる。
プーチンはこの時、「何者かがわれわれの領土を攻撃し、問題を引き起こすために、紛争地域にそのような兵器を供給することが可能だと考えるのであれば、ロシアに対してそのようなことをしている国々の機密施設を攻撃することになる世界の地域に同等の兵器を供給する権利がないのだろうか、とわれわれは考えている」と語っている。 金正恩と条約に署名した後、プーチンは北朝鮮にそうした兵器を持たせることを「排除しない」と繰り返した。「この観点からすれば、金正恩は最良の”受け手”だ」とゴルツは主張する。
ロシアがインドに原子力潜水艦を貸与した前例があることをゴルツは指摘するが、北朝鮮の衛星打ち上げ能力を支援するという名目で、長距離ミサイル開発への援助も含まれる可能性がある。 ■朝鮮半島の安全保障と安定にも影響が 今回のICBM発射実験に対するロシアの援助の可能性について直接質問されたアメリカと韓国の高官は、そのような援助の証拠はまだないと記者団に答えた。 北朝鮮の核・ミサイル計画を注視してきた元アメリカ政府高官は、最近の新型ICBMの発射から得られた証拠によれば、「実証された性能レベルを維持するために、ロシアからの追加技術は必要ないだろう」と筆者に語った。
それでも、「北朝鮮が軍隊の配備と引き換えに、最先端の技術移転を求める可能性は高い」と韓国のキム・ヨンヒョン国防相は語った。同氏はロシア側が北朝鮮を援助するかもしれない分野として、ICBM、戦術核兵器、偵察衛星、弾道ミサイル発射潜水艦を挙げた。 北朝鮮とロシアの間に深まりつつある軍事軸の本質については、多くの未解決の疑問が残っている。しかし明らかなのは、こうした動きがエスカレートしていることであり、ウクライナに対する戦争遂行だけでなく、朝鮮半島の将来の安全保障と安定にとっても危険性を増していることである。
ダニエル・スナイダー :スタンフォード大学講師