「これはただの指導」企業で自覚のないパワハラが生まれてしまうワケ
スポーツ界はすでに気付きはじめている“指導の重要性”
会社以外にも、同じようにパワハラが起こってきた世界があります。それはスポーツの世界です。共通するのは指導が感覚で行われているところです。スポーツは、チームや個人で勝つことを目標にして、会社は利益や利潤をあげることを目標にして、一生懸命に頑張っています。双方、目標ははっきり分かっているのに、指導する側は自分の経験に基づく感覚論で指導をしているわけです。 ただ、スポーツの世界はその指導法の間違いに気付きました。声を荒らげて怒ったり、体罰を加えることで鍛えても、あんまり伸びないぞと。それよりも、指導者が指導法をきちんと勉強することが大切じゃないか。プロの指導者がいるチームの方が成績が上がりやすいんだと分かってきたんですね。ところが、会社はいまだに気付いていません。パワハラによって人が辞めても「あいつは根性がなかったんだ」で片付けてしまいます。 スポーツの世界では、指導者の役割、個性に合わせた教え方、人それぞれのモチベーションの上げ方など、様々な科目を指導者が勉強します。会社では、指導する側がこれらを全く意識せずに、自分がやってきたことを言っているだけ。それが昨今の会社の状況であり、改善するべきポイントです。
指導が変われば、自然とパワハラはなくなる
研修で「これがパワハラですよ」「パワハラはやめてくださいね」と注意喚起すればパワハラはなくなるものだと、昔は無邪気に信じていたこともあります。しかし、パワハラをなくすことを目的にしてしまうと、方針を誤ってしまうのではないかと私は考えています。 パワハラは、“正しい指導”という概念が抜けているせいで発生してしまいます。つまり、指導さえしっかりしていけば、結果として自然にパワハラがなくなっていくんです。「あれ?気付いたらうちの会社パワハラなくなったよね。2年目3年目の社員も生き生きとしてるよね」という状況が理想であり、一番重要なことです。 4月から自分の部下・後輩が初めてできた人、新しい部署に配属されて責任者になった人、普段から指導したりアドバイスしようと思っているけどもなかなか上手くいかないと感じている人は、数多くいらっしゃるかもしれません。「うちの部下、全然ダメだな」「俺の言う通り動いてくれないな」と思うのではなく、「自分はいい指導者になろう」と意識を改革してみるのはどうでしょうか。色々勉強して、人を育て、動かしていく。自分に求められているのはそういう仕事なんだと頭を切り替えてみると、ガラッと変わってくるんじゃないかと思います。 好きなスポーツを思い出してみてください。監督やコーチが変わることで、チームの成績や雰囲気が大きく変わることはありますよね。会社も同じなんです。自分の指導しだいで、自分のチーム(会社)が生まれ変わるかもしれないんだと、ぜひ前向きに捉えていただきたいです。