18時に帰る若手を横目に残業...「管理職の罰ゲーム化」が加速する日本の職場
管理職になることは、もはや「罰ゲーム」のようなもの──。頑張って出世した先に待っている役職が、なぜこのようなそしりを受けるようになってしまったのか? また、どうすれば「罰ゲーム」から抜け出せるのか?『罰ゲーム化する管理職』の著者であるパーソル総合研究所の小林祐児氏に聞いた。(取材・構成:杉山直隆) 【図】上司による「害のある」フィードバックの特徴 ※本稿は、『THE21』2024年6月号特集「今より1時間早く仕事が終わる技術」より、内容を一部抜粋・編集したものです。
成果主義とフラット化で、管理職の負荷が増大
「朝から晩まで会議や1on1ばかりで、夜からしか自分の仕事ができない」 「若手社員がみな指示待ちの姿勢で、主体的に動いてくれない」 「部下がメンタルヘルスの不調を訴え、常に人員が欠けている状態」 「ハラスメントと言われるのが怖くて、部下を叱れなくなった」 これらは管理職から聞こえてくるネガティブな声です。かつて管理職に昇進することは、ビジネスパーソンにとって誇らしく喜ばしいことでした。ところが、今や管理職への昇進は「罰ゲーム」とさえ言われます。 なぜ管理職は罰ゲームと化してしまったのでしょうか? その理由は、ここ20~30年の経営トレンドが、ことごとく管理職を苦しめるようなものばかりだったからです。 まず日本企業の人材マネジメントに大きな影響を与えたのが、90年代後半から広がった「成果主義」です。給与などの処遇が成果によって強く左右されるようになったため、管理職は短期的業績を追いかけることを余儀なくされました。 また、意思決定を速くするために多くの企業で進められたのが、旧来のピラミッド型組織の階層を減らす「組織のフラット化」です。これによって階層、つまり管理職の数も減り、一人あたりが統率する部下の人数が増えました。 それと同時に進んだのが、「プレイングマネジャー化」です。バブル以前の管理職はオフィスに留まってマネジメントをしていればよかったわけですが、バブル崩壊後は自らも数字責任を抱えて、第一線で汗をかくことも求められるようになりました。ただでさえ部下の面倒を見る手間が増えたのに、プレイヤーの仕事もするわけですから、業務が忙しくなって当たり前です。