A代表基準で失点捉えた柏DF関根大輝「もっと自分がこだわれる」ベンチ外でも実り多かった森保J初招集、初心思い返した4年半越し埼スタ凱旋
[10.23 J1第25節延期分 浦和 1-0 柏 埼玉] J1残留争いの直接対決に臨んだ柏レイソルは0-0で迎えた後半アディショナルタイム5分、右サイドに侵入してきた浦和レッズのクロス攻撃を阻み切れず、不運な形で与えたPKを同10分に決められ、最後の最後で勝ち点を落とした。失点に直結するPKを誘発したのはDF立田悠悟のハンド。ところが試合後、報道陣の取材に応じた日本代表DF関根大輝は「PKになってしまった場面はハンドも含めてしょうがなかった」と立田をフォローし、クロス対応に当たった自らの対人守備を“A代表基準”で省みていた。 【写真】「昇天した」「救急車で運ばれちゃう」伊東純也のモデル顔負けショットに大反響…久保建英らも脱帽 PKを与えた場面では浦和が柏の右サイドに人数をかけてきており、長沼洋一と安居海渡がテンポよく絡んだのを起点に、原口元気のスルーパスが関根貴に通ったという流れ。もっとも、その対応に当たった関根大は原口にいったん寄せようとしながらも、スルーパスが出る場面で判断を変えたことで関根貴に追いつき、さらにクロスに対しても身体を入れて触っており、上々の対応をしたかのように思われた。 ところが関根は自らの対応に納得感を見せなかった。問題視したのはクロスをブロックした後、ゆるく上がったこぼれ球がゴール方向に向かってしまった点。ボールの勢いを殺したのみでは満足せず、自らのプレーにさらなる高い基準を突きつけた。 「フリーで運ばれてしまって、自分のスペースに出されて、結果的にクロスが自分に当たった形になってしまった。そこでクロスをコーナーでもいいから完全に跳ね返すことだったり、そういうところにも自分がこだわっていれば、相手にシュートを打たれる場面にもならなかったし、もっと自分がこだわれることがある。クロスを上げさせても“自分に当たって勢いが弱まったからOK”ではなく、完全に跳ね返すとか、もしくは上げさせないくらいに詰めるとか、そういうところにこだわっていければ」(関根) 実際にこの日の関根は失点につながったラストプレーまでの間、共にパリ五輪を戦ったDF大畑歩夢とのマッチアップを始め、まさにその言葉どおりの守備対応を続けていた。 とくに圧巻だったのは後半アディショナルタイム3分のピンチの場面。相手セットプレーの二次攻撃に備え、ペナルティエリア左に位置取っていた関根は、ドリブルを仕掛けてきた関根貴に一度寄せようとしたが、原口が裏に抜けようとするのを横目で察知。素早く判断を変えてカバーリングに舵を切ると、スルーパスにスライディングで反応し、マイボールにしていた。 PK献上の場面でもこのシーンと同様、相手のクロスを自らのところで止めることができていれば、最後の失点はなかったというのが関根の見解だ。もっとも関根はこの後半アディショナルタイム3分の場面でさえ、自身の判断に向上の余地があったと考えているようだ。 「関根選手に当てられて、原口選手に裏を取られた感じになったので、出てくるだろうなという雰囲気があって、コースを消しに行って、ボールの強さも思い描いたどおりになった。でも、あれももう一つ早く動いていれば、スライディングもせずにボールを取れていたと思う。ちょっと遅れたことでああいう対応になってしまった」 失点につながった場面のみならず、相手の攻撃を阻むことができた場面にも反省の目を向ける――。映像確認にも十分な時間がなかったであろう試合後の時点でも、関根はそうした姿勢を強調しながら自身のプレーを振り返っていた。 ■「代表に行って守備の意識が変わった」 関根によると、そうした守備対応への基準の高まりは、追加招集で帯同した日本代表での活動経験が大きかったようだ。10日のアウェー・サウジアラビア戦(○2-0)、15日のホーム・オーストラリア戦(△1-1)ではいずれもベンチ外に終わり、出場機会を得ることはできなかったものの、A代表の選手たちと共にした日々のトレーニングへの充実感を口にした。 「代表に行って守備の意識は変わったし、止められないと評価されないので。日本には強力なアタッカーがいる中、そこは練習からマッチアップしてすごく感じた部分だった。ちょっとでも気を抜いたら簡単に裏を取られるし、行けるところを逃すと本当にボールを取れない。そういう部分のアラートさは今にも本当に活きていると思います」 日本代表の戦術練習は大半が非公開で行われるため、MF三笘薫ら世界的アタッカー陣とのマッチアップもあったであろう紅白戦でのパフォーマンスをうかがい知ることはできない。だが、サウジアラビア戦を終えた帰国後のトレーニングでは久保建英や旗手怜央と同じチームを組み、中村敬斗や田中碧とのマッチアップに奮闘するなど、限られた公開練習でも非日常の光景は多く見られた。 また練習冒頭の恒例となっているボール回し(鳥かご、ロンド)では、技術の高い選手が居並ぶグループにあえて割って入り、ときおりいじられながらもA代表基準を日々体感。また練習後の居残りメニューでは、冨安健洋や板倉滉といった現在の主力CB陣も調整に活用する斉藤俊秀コーチ主導の個人練習に取り組む姿も見せるなど、A代表で過ごした10日間は着実に血肉となっているはずだ。 北中米W杯アジア最終予選に臨む日本代表では、アクシデントへのリスク管理の観点からベンチ入りの23人枠よりも多く帯同メンバーを招集するのが通例となっており、関根のようにベンチ外となる選手が一定数出るのは避けられないことから、一部で招集方式に批判の声も聞かれる。それでも追加招集という立場で呼ばれた関根自身にとっては、ベンチ外という立場ですらも貴重な経験だった。 「オーストラリアとサウジアラビアと試合をしているよりも、(日本代表の)紅白戦のほうがレベルが高いと思うので。全然プレースピードも違うし、シンプルに上手い選手が集まっている中でプレーするだけでも自分にとっては経験したことのないくらいにすごいもの。もちろんベンチに入って、さらに試合に出たいという思いはあるけど、ベンチ外だったとしても追加招集で呼んでもらっただけでラッキーというか、その場を経験できただけでも自分にとって本当に大きいことでした」 その経験があったからこそ、新たな野望もより明確な形で芽生えていた。「ただやっぱり、もう試合に出たいですね。1回経験したからには意識もどんどん変わってきているし、あのレベルでもっとやりたい。いまはチームとして苦しい状況かもしれないけど、もっと個人としてもいいパフォーマンスをして、隙を作らないように、また日本代表に入れるようにやっていきたいと思います」。その思いがJリーグでの妥協なきパフォーマンスにつながっているようだ。 なお関根にはこの日、もう一つ、未来へのモチベーションをかき立てられる出来事が起きていた。それは4年半ぶりに埼玉スタジアム2002のピッチに足を踏み入れたことだった。 関根は静岡学園高時代の2020年1月13日、全国高校サッカー選手権決勝・青森山田高戦で埼スタでの試合を経験。だが、チームは大会史に残る0-2からの逆転劇で24年ぶりの全国優勝(単独優勝は史上初)を成し遂げた一方、当時2年生の関根は大会を通じて1試合の出場にとどまり、決勝戦もベンチに座ったまま試合を終えていた。 それ以降、ベンチ外だった15日のオーストラリア戦も含めて埼スタでのメンバー入り経験はなく、この日が「ピッチに立ったのは初めて」だったという関根。この日の観客数は選手権決勝の56025人(大会史上最多)には遠く及ばない26304人にとどまったが、雷雨延期試合の平日開催としては異例の数ではある上、また残留争いに心血を注ぐ両チームのサポーターが鬼気迫る雰囲気を作り出していたこともあり、深く心に残る試合になったようだ。 「観客は平日で少し少なかったと思うけど、両チームのサポーターがすごい雰囲気を作ってくださって、こういうレッズサポーターの圧であったり、逆にレイソルサポーターの声もすごく聞こえてきて、すごくいい雰囲気で試合ができた。今年に入っていろんなスタジアムで試合をやってきたけど、今日がアウェー感が一番あったと思います」 「スタジアムに着いてグラウンドに出た時はやっぱり優勝した時のイメージがあるスタジアムなので、すごく楽しみな気持ちでプレーしていましたし、あれももうだいぶ前のことで、当時は全然プレーもできていなかったので、それを考えると少しずつだけど成長してきたんだな……と感じました」 「でも自分が目指しているところはもっと高いところにあって、まだまだ何も満足はしていないし、そういう部分で昔のことを思い出せるピッチに立てたのは初心に戻れるし、また新鮮な気持ちでプレーできそうだなと思います」。勝ち点を落とした悔しさも胸に刻まれた“埼スタ凱旋”。関根は残る4試合に向けて「勝つしかないし、チームのみんなも同じ方向を向いている。まずは次の試合に全てをかけてやっていきたい」と決意を新たにスタジアムを後にした。