完全にしくじりました…ピーク年収1,200万円、66歳・元「大企業の敏腕部長」が定年後に〈時給1,180円〉のバイトを辞められない「まさかの理由」【CFPの助言】
高齢者の就業者は年々増加している
総務省「労働力調査(基本集計)2023年(令和5年)平均結果の概要」によると、日本の2023年の65歳以上の就業者数は、914万人(男=534万人、女=380万人)です。2013年の637万人(男=390万人、女=247万人)から、10年間で約1.4倍増加しています。 2023年の65歳以上就業率は ・65~69歳、52.0%(男=61.6%、女=43.1%) ・70~74歳、34.0%(男=42.6%、女=26.4%) ・75歳以上、11.4%(男=17.0%、女=7.7%) と、65歳以上の半数は働いているようです。 2023年の65歳以上の役員を除く正規の職員・従業員は126万人(男=85万人、女=41万人)、非正規の職員・従業員は、417万人(男=211万人、女=206万人)となっています。
Aさん夫婦が老後生活を無事乗り切るには?
現在、Aさんの支出は月55万円ほどですが、子どもが大学を卒業して住宅ローンが完済したら、月30万円の支出にしたいと筆者に話します。そこで、Aさんのアルバイト収入をあと2年間は月6万円を維持する、今後の家計収支を試算してみました。 その結果、60歳までに払い終えた医療保険で夫婦ともに終身の保障がされているなど、すでに家計の見直しはほぼ終えていました。夫婦が100歳まで生きると、そのとき200~300万円の貯蓄は机上に残っているでしょう。 ただ筆者が気になったのは、A夫婦の年齢が10歳差であることです。さらに統計値ですが男女の平均寿命の差は6歳※ですから、単純にBさんが将来16年間、独居生活をする可能性があり、そのための準備が必要と考えました。 ※2024年日本人の平均寿命は、男性81.09歳、女性87.14歳(厚生労働省「令和5年簡易生命表」)より。 たとえば、Bさんの年金を70歳まで繰り下げて受給するとします。 Bさんが通常の65歳(Aさん75歳)から受給すると月8万6,000円です。老齢厚生年金、老齢基礎年金ともに70歳まで5年間繰り下げて受給すると、1ヵ月あたり0.7%ですので5年間で42.0%、月3万6,120円増額した、月12万2,120円の年金が受給できる計算となります。 この場合、Aさんが75歳から80歳まで家計収入が減ってしまうため、スーパーでの就業期間を増やすなど、準備として貯蓄を増やす必要があります。 万が一Aさんが亡くなった場合、Bさんは65歳まで、遺族厚生年金と中高齢寡婦加算とで、毎年184万円(月約15万円)。65歳以降は、自分の老齢厚生年金と遺族厚生年金とで、毎年約200万円(月約16万円)受給できる見込みです。 また、現在住宅ローンを返済中の自宅を、資産としてどのように子どもたちに相続するか考える時期にも差し掛かっています。 筆者がここまで話をすると、Aさんは「いやぁ、完全にしくじりましたね。最初の計画が甘かったのかな。当面の家計はよくても、統計値といえども妻は私より16年も長生きをするなら、早めに準備しなくては……。職場にもようやく慣れてきたので、70歳まで働かせてもらえるか相談してみます。それにしても、相続を考える歳になっていたとは、我ながらびっくりしました」と苦笑いを浮かべました。
安心は自分で作る
その後Aさん夫婦は話し合い、Bさんの年金の受給を70歳まで繰り下げること、また家計支出も2年後を待つことなく、今から毎月5万円を目標に、再度、家計の支出内容を見直し始めたそうです。 Aさんは、老後の生活に使うところだった退職金を、目先の子どもの教育費や住宅ローンの返済に充て、本来の目的に使う前に枯渇することに気が付きました。 「現役」「老後」と隔てることなく、家計が破産しないように、収支のバランスのとれた家計の舵取りが生涯において大切なことといえます。 牧野 寿和 牧野FP事務所合同会社 代表社員
牧野 寿和
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