廃業危機の会社から株を100%買い取り、地域の中核企業に育てていく 「事業承継」をビジネスに、近江商人のふるさとに生まれたベンチャーとは
◆不動産会社も再生
平井氏が継承したのは、滋賀県内に複数の店舗を構えるsobuグループ。 地元を中心に住宅建設や不動産を扱うグループ企業だ。 家づくりに加えて、土地の売買や仲介など事業を拡大してきた。 しかし、従業員が増え、業務が細分化すると、うまく収益が上がらなくなってきたという。 創業者の奥文宏氏は1級建築士。 財務がわかる元銀行マンの挑戦に賛同した。 奥さんは「もともと事業承継をするっていう意向も本来は薄かったんですけど、SoFunさんの取り組み、一体化でやっていただく中で、もう一方ワンランク上を目指すのに思い切ってそういうふうに進めてみようと」 平井氏が推進したのは、主に予算管理。見積もりの項目や、そのコストを明確にすることで、顧客には低価格を、会社は収益を確保することができた。 そして自ら分譲地開発などを手がけることになった。 今の目標はグループ売上高10億円を安定して出せる企業にすることだ。 平井さんは「もともとは2期連続で赤字。たぶん毎期1000万ぐらいの赤字を直近で出していました。承継後は、約半年で黒字化を達成でき、次の期についても大幅に増益が見込める状況になりました」
◆「ファンド」の儲け方とは違う
──通常のファンドは買い取った会社を売却し、その売却益で収益を出します。しかし、SoFunは株を買ったあと、その株を売却しません。 手操 ファンドとかだと、比較的規模の大きい会社で「ここをテコ入れすればそこの会社が買ってくれるんじゃないか」という算段で投資をするのが基本です。 対して、SoFunは基本的に永続保有することを前提としています。 小さい規模の会社や、地方の会社を相手にしようとすると、永続保有ということをやっていかないと、リターン的にもビジネスとしての社会的インパクトとしても、小さいものになってしまうと考えています。 ──SoFunのグループに入る事業承継に悩んでいる会社は、どういった規模の会社が多いのでしょう? 吉川 個人で買うにはちょっと株価が高すぎ、ファンドが相手にするには規模が少し小さすぎる。 この層が地域を支えている企業です。 そこをしっかりとテコ入れし、地域の中核の企業に育てていくことが必要だと思います。 ──SoFunとしての収益はどのように回収しているのでしょうか。 吉川 会社の配当や、SoFun本体でも資金調達をしています。 僕らもそれの返済を当然しないといけません。 金融機関と投資家には長い目で見てもらい、10年スパンなどで資金調達をしています。 ──SoFunは、新たに滋賀県にある金属加工の会社を事業承継し、創業45年の企業に36歳の新社長が誕生した。すでに鹿児島と岡山にもSoFunの子会社が設立され、さらに多くの承継企業が予定されているという。
■プロフィール
【SoFun株式会社 会社案内】 3人の地方銀行出身者が、「中小企業が再び輝く会社を作り、日本をおもしろくする」というビジョンを掲げて創業。中小・零細企業を対象に第三者事業承継を支援する企業。後継者候補を発掘・育成するだけではなく、事業承継型投資を行ってチーム型経営を通して承継先企業の成長をサポートする。新しく承継した経営者によって事業成長が加速させ、事業変革によって経営再生を実現している。