角田裕毅擁するレーシングブルズ、2024年シーズン途中の”失速”は必要な躓きだった……メキーズ代表「現状に満足することを防いでくれた」
レーシングブルズのローレン・メキーズ代表は、スペインGPで投入したアップデートがうまくいかなかったことが、2024年シーズンに苦しんだ主な原因になったと語ったが、この不調は今後に向けて必要なことだったと考えているようだ。 【ギャラリー】巳年だからヘビのF1……ジョーダン197 RBは2025年シーズンから登録名称をレーシングブルズと正式に変更し、角田裕毅のチームメイトとして新たにルーキーのアイザック・ハジャーを迎え入れるなど、新たなスタートを切ることになる。しかし2024年は、好調なスタートを切ったものの、徐々にパフォーマンスは低迷。最終的にはコンストラクターズランキング8位でシーズンを終えることになった。 ただこの低迷についてメキーズ代表は必要な改革であり、それはずっと前から必要なことだったと語った。 「第10戦(スペインGP)で大きく後退した。マシンにダウンフォースを追加できたと感じていたが、速くはならなかった。むしろ遅くなってしまったんだ」 メキーズ代表はmotorsport.comの独占インタビューにそう語った。 「それは経験しなければいけない痛みだったと思う。なぜならこの後退によって我々は、『組織構造で何が欠けていて、この後退を招いたのか』ということを自問自答しなければならなくなったからだ。そして、我々が行なおうとしていた変化を加速しなければならなくなった」 「第10戦での失敗は、我々が現状に満足することを防いでくれたと思う。今まで行なってきたやり方では、決して十分ではないと気付かせてくれるいいきっかけとなった」 チーム再編のためのプロセスはどのようなモノなのか? そう尋ねられた時のメキーズ代表の回答は、アンドレア・ステラ代表がマクラーレンで行なってきたことと似ているように聞こえる。つまり、適切な人材を適切な場所に配置し、それぞれが才能を発揮する上で適切な技術的組織構造を作り上げるということだ。 「正直に言って、それが全てだ」 「まずはプロセスだ。我々は、スタッフが自分自身を最もよく表現できる環境を整えるよう、意識的に努力してきた。つまり構造を変え、アプローチを変え、プロセスを変えることだ。それをチームに溶け込ませるには少し時間がかかるが、そこが一番大切なことなんだ」 「そして彼らをプロジェクトの中心に据え、彼らが必要なツール……罠に陥らないために必要な、より良い分析を作成するのだ。だからそれはツールだと言うことができる。でも実際には、ツールはスタッフがそれぞれの環境でどんなパフォーマンスをするかという結果なのだ。つまり、そのことは人から始まる」 2025年の1月から、レーシングブルズの空力拠点は、古くて手狭になったビスターから、親チームであるレッドブルのファクトリーがあるミルトンキーンズの新しいビルに移転する。このビルは、レーシングブルズのイギリスにおける新しい拠点として、イタリア・ファエンツァにある元ミナルディのファクトリーと並んで機能することになる。 「我々はふたつの並行した流れを持って、今シーズン(2024年)に臨んだ」 そうメキーズ代表は説明する。 「一方では、昨年(2023年)後半、アブダビに向けてマシンを投入する必要があった。シーズン初めのマシンは、前年のアブダビでご覧いただいたマシンに非常に近いものだった。冬の間にいくらか進歩したが、我々が望むところに到達するには十分ではないと感じていた」 「それと並行して、構造、仕事の進め方、そのプロセスにかなり大きな変化が起きていた。なぜなら、より大きな結果を狙えるチーム作りのプロセスを開始しているからだ」 「バルセロナで投入したアップグレードは、たしかにダメージを及ぼした。その修正は17戦目か18戦目までかかったんだ。そしてその間に、競争力が低下した。だから必要だった痛みは、グループとしてその失敗を受け入れ、理解、修正というプロセスを経たという事実だと思う。これは我々のスポーツの核心だ」 「開発の特効薬などないと主張したい。本当に重要なのは、マシンのあらゆる部分で、そういうアプローチを取るということだ。タイヤでも、スタートでも、そしてピットストップでも、その他のどんなことでも構わない。しかしこの時のことは、困難に直面した時に、中心にいるグループが団結することを望んでいるということを示す、非常に良い例だった。チーム内部で我々に強いられたことに関して言えば、それは本当に前向きだったと感じている」 レーシングブルズは、フロントとリヤのサスペンションやギヤボックスなど、許されている限りのカスタマーパーツの供給を親チームであるレッドブルから受けている。そのため、他の部分を前に進めるための仕事に集中することができる。 しかしそれでも、中団グループの先頭に立つまでには「障害となるモノは他にもたくさんある」と、メキーズ代表は覚悟している。 そしてメキーズ代表は、次のように付け加えた。 「これが最終地点か? 決してそんなことはない。ツールの改善、プロセスの改善、分析の改善など、まだまだやるべきことはたくさんある。そして、第10戦でのアップデートの問題だけだったと考えるのも間違いだ」 「現実的には、この数ヵ月の間で、空力とは関係ない、他の多くの事柄で進歩を遂げてきた。それは前進する必要があった部分なのだが、まだまだ前に進めていく必要がある」
Filip Cleeren