’24政治決戦(2)旧統一教会問題の行方は
メディアの取材避ける「親密」候補
韓総裁を礼賛した安倍のビデオメッセージは山上徹也被告による銃撃事件へと発展する。しかし、トカゲの尻尾切りのように自民党は一方的に教団との関係を切った。教団だけが負の存在として切り捨てられ、自民党は個々の議員に接点を自己申告させる簡易な「点検」で幕引きを図った。 山上は旧統一教会被害者の第2世代に属する。教団は、信者からの高額かつエンドレスな献金といった財産収奪にとどまらず、「宗教2世」と呼ばれる子ども世代の人生をも狂わせてきた。旧統一教会のようなカルト教団による被害は本来、政府が取り組むべき問題である。だが、政治家が選挙支援のうまみから教団を実質的に保護し、被害は放置されてきた。 今回の総選挙の争点となった裏金問題と旧統一教会問題は、いずれもこの10数年、自民党を牛耳ってきた安倍派が震源だ。しかも銃撃事件後、最初の総選挙であるため、私は旧統一教会との関係を指摘された議員やキーマンとなる候補を中心に取材した。 特徴的だったのは、メディアの取材を避ける自民党候補が複数いたことだ。教団との親密な関係が指摘された神奈川18区の山際大志郎元経済再生担当相(比例復活)の陣営は、出陣式に訪れた多くのメディアの取材をシャットアウトし、街頭演説も一切行わない方針と告げた。韓総裁を「マザームーン」と持ち上げた神奈川4区の山本朋広元防衛副大臣(落選)にもメディアの直撃取材を回避する行動が見られた。
自公過半数割れでカルト規制は進展するか
カルト被害の防止には、フランスにおける反セクト法のような法律の制定が武器になる。だが、自民党や創価学会を支持母体とする公明党は後ろ向きだ。旧統一教会への解散命令に備えて法整備が望まれた財産保全法案は与党の反対で不成立となった。宗教カルトにおける問題はその反社会的性にあり、信教の自由に抵触するものではない。 総選挙の結果を受けて、石破茂政権は政治とカネの規制強化を公言しているが、旧統一教会の問題に踏み込む姿勢は見られない。どこを突いてもヤブヘビになるからだろう。本来、カルト団体の規制は第三者委員会による調査、あるいは国会の国政調査権を発動して調べるべき問題である。大韓民国中央情報部(KCIA)と統一教会の文鮮明教祖の共謀による、米国への政界工作の報告書を作成したフレイザー委員会のような取り組みが求められる。 現在、東京地裁において旧統一教会の法人としての解散命令請求が審理されている。解散命令の司法判断が出る前に被害者へ弁済されるべき財産が散逸してしまわないよう、さらに残余財産が教団の関連団体に移管されることのないよう様々な法整備が求められている。実効性のある法整備に消極的だった自公が衆議院で過半数割れしたことで、新たな動きが出てくる可能性もある。 旧統一教会に依存し、結果的に被害を放置してきた政治家は真摯に反省し、従来の事実関係について包み隠さず明かすべきである。本当の意味での関係断絶はそのプロセスを経た先にあるはずだ。
【Profile】
鈴木 エイト ジャーナリスト・作家。日本大学卒。日本ペンクラブ会員(言論表現委員会所属)。『やや日刊カルト新聞』主筆。日本脱カルト協会理事。2023年、メディアアンビシャス賞 特別賞、日隅一雄情報流通促進賞 特別賞、日本外国特派員協会(FCCJ)報道の自由賞 日本部門栄誉賞、調査報道大賞デジタル部門 優秀賞、日本ジャーナリスト会議JCJ賞大賞、第23回石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞 草の根民主主義部門 大賞を受賞。『「山上徹也」とは何者だったのか』(講談社+α新書)、『自民党の統一教会汚染』シリーズ (小学館)など、編著・共著多数。