がんサバイバーら4人が当事者の思いなど語る―ネクストリボン2024
◇イベントダイジェスト【3】
「ネクストリボン2024~がんとの共生社会を目指して~」の第2部のトークイベントでは、清水公一さん(社会保険労務士事務所Cancer Work-Life Balance 代表)らがんサバイバーなど4人が登壇。がんになって考えたことや仕事との両立、がんとの付き合い方などについて、当事者としての思いを語った。本稿では前半2人の講演をダイジェストでお届けする。(全4記事の3)
◇第2部 トークイベント「自分らしく生きる~肺がんステージ4からの独立、出産~」
清水公一さん(社会保険労務士事務所 Cancer Work-Life Balance代表) ◇ ◇ ◇ 2011年に結婚、翌年長男が生まれたが2カ月半後に肺がんが見つかった。ステージ1と診断され、当時の5年生存率は73.6%だった。楽天家なので「大丈夫だ」と思っていた。しかし、その後副腎への転移が見つかって手術したところ、多発転移が見つかり診断はステージ4となり、放射線治療を受けた。当時、肺がんステージ4の5年生存率は4.2%で、主治医からは延命治療しかできないと言われた。抗がん薬治療を3年ほど続けたが、脳転移のコントロールが難しくなり、エンディングノートを書いたり身辺整理をしたりした。 2015年、非小細胞肺がんに免疫チェックポイント阻害薬のニボルマブが保険適用になり、投与を受けた。主治医からは「効く人は少ないのであまり期待しないほうがよい」と説明されたが、心の奥底では非常に期待していた。1カ月後に腫瘍マーカーの数値が下がり、2カ月後には腫瘍の縮小が確認された。「まだ生きていていいんだ」「もう少し家族と一緒にいられる」と思い、ここでもう1人子どもを持つ決断をした。抗がん薬治療で妊孕性(にんようせい)が失われる前に精子を凍結保存していた。次男が生まれた後、リンパ節に転移が見つかり放射線治療を受けたが、現在は寛解状態を維持している。 がんとの向き合い方では「好きなことを我慢しない」ことを大事にしている。治療中も子どものライフイベントや好きな乃木坂46のライブに行くといった予定を入れていた。子どものお遊戯会や運動会など、近い未来をみて希望を持てるようにした。治療中は無理をしないほうがよいと思う方も多いだろうが、好きなことをするために治療も頑張れる。周囲の方は、それができる方法がないか考え、後押ししてあげてほしい。 その後、社会保険労務士として独立した。患者の悩みとしてはまず治療がある。治療成績が向上したことにより、闘病生活が長期間にわたる患者も多くなってきた。そのため、働きながら治療できる環境や経済的な問題、自分の人生で大切なものは何か――そうした悩みがぐるぐる回っていると思う。 自分の場合は、家族と一緒にいたいという思いが強く、なおかつお金に困らないためにはどうしたらよいかと考えた。現在は社会保険、医療費、ケア、障害年金などの専門家として、患者の就労支援やサポートができるのではないかと仕事をしている。 闘病生活で支えになったのは、病気のことを何も知らない子どもの純粋無垢な笑顔だった。体を救ってくれたのは医療従事者の皆さん、心を救ってくれたのは乃木坂46、もちろん一番は妻の愛情だ。 がんになった過去は変えられないし、予想外のことも起きるが、精いっぱい頑張って生きていくしかない。がんになったことも含めて、自分らしく生きることができたと思える人生になればよいと思っている。