スイス腕時計、年内は低調な見通しと業界団体-8月の輸出額増加
(ブルームバーグ): スイス時計協会が19日発表した8月の時計輸出額は前年同月比6.9%増の約20億スイスフラン(約3360億円)となった。貴金属製の高級時計の需要が輸出の伸びに寄与したが、同協会は「依然として低調」だとし、低迷が年内続くとの見方を示した。
8月の輸出は時計ブランドの明暗が分かれた。低・中価格帯の需要が大幅に減少する一方で、高額な時計の売れ行きは好調だった。
フォントベルのアナリスト、ジャンフィリップ・ベルチー氏は、高価格帯以外の腕時計ブランドにとって2024年は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)後のブームからの「急激なリセットと成長正常化の年となる」と指摘した。
8月は、卸売価格3000スイスフラン超の時計の輸出が増加し、数量ベースで5%、金額ベースで15%伸びた。それ以下の価格帯の時計は、金額ベースで14%、数量ベースで11%減少した。総輸出量は10%減だった。
こうした結果は、中国主導の景気減速が業界全体に波及している深刻な状況を反映している。米国に次ぐ世界2位の市場である中国への輸出はほぼ6%減少し、香港への出荷は11%減少した。不動産価格下落に伴う景況感の悪化が響いている。
同協会は、時計メーカーが「中期的な見通しの不透明さを嘆いており、それが今後に向けたより慎重な対応、場合によっては事業の縮小につながっている」と説明した。
スイス時計協会とスイス時計産業雇用者連盟は今週、需要の大幅な落ち込みがスイス時計ブランドに打撃を与え、雇用を危険にさらしているとして、事業を圧迫しているスイスフラン高を是正する措置を講じるようスイス国立銀行(中央銀行)に求めた。
受注減少に伴い、政府の制度を利用して従業員を一時帰休させている大手ブランドもある。ソーウインド・グループのパトリック・プルニエ会長兼最高経営責任者(CEO)はブルームバーグ・ニュースに対し、傘下のジラール・ペルゴやユリス・ナルダンで従業員の約15%が一時帰休していると明かした。