討論会に臨む（左から）国民民主党の玉木雄一郎代表、公明党の石井啓一代表、立憲民主党の野田佳彦代表、石破茂首相（自民党総裁）、日本維新の会の馬場伸幸代表、共産党の田村智子委員長、れいわ新選組の山本太郎代表＝１２日午後、東京都千代田区

　12日に開かれた日本記者クラブ主催の党首討論では、衆院選最大の争点となる「政治とカネ」で、野党は自民、公明両党の対応に攻勢を強めた。核廃絶の取り組みも論点となり、石破茂首相の受け答えからは核抑止を重視する姿勢が鮮明となった。一方、安全保障政策などの隔たりから、野党共闘はますます遠ざかりつつある。 【図解】自民の裏金議員と衆院選対応 　◇公明に飛び火 　「極めて厳しいのは肌身に染みて分かっている。自公で何としても過半数を取りたい」。討論会の締めくくりで、衆院選の目標議席を問われた首相は、派閥裏金事件の逆風を率直に認めた。一方、立憲民主党の野田佳彦代表は「自公の過半数割れ」を掲げた。 　討論会で首相が追及されたのは政党が議員に支出する「政策活動費」。野党は公約で廃止を掲げるが、自民は「将来的な廃止も念頭」と玉虫色の対応を続ける。 　国民民主党の玉木雄一郎代表は「廃止を念頭に掲げる選挙で政策活動費を使うのは矛盾するのでは」とただしたが、首相は「違法的な使い方はしない」と述べ、今回の衆院選にも充てる方針を示した。倫理的な後ろめたさを認めつつも、「だから抑制的であるべきだ」と開き直る場面も。煮え切らない首相の対応に、玉木氏は「われわれは使わない。せめて同じスタートラインを求めたい」と批判を強めた。 　余波は公明にも及んだ。日本維新の会の馬場伸幸代表は、公明党が自民で非公認となった「裏金議員」にも推薦を出したことをやり玉に挙げた。 　公明は「クリーンな政党」を看板に掲げているが、石井啓一代表は「推薦はあくまでも地元の意向を最大限尊重している」などと苦しい説明に終始。馬場氏は「自民を上回る形で（裏金議員を）支援することは、国民の理解が及ばないのではないか」と皮肉った。 　◇「核廃絶」で距離 　日本原水爆被害者団体協議会（日本被団協）のノーベル平和賞受賞決定を踏まえ、立民の野田氏は、米国の核兵器運用に参加する「核共有」を持論とする首相の姿勢に触れ、「根本的な疑問を持っている」とただした。 　首相は「核廃絶の思いは変わらない」と述べつつも、旧ソ連崩壊後にウクライナが核兵器を放棄したことがロシアによる侵攻の遠因となったとの認識を強調。逆に、野田氏に対し「なぜウクライナで抑止力は効かなかったと考えるか」と質問し、核抑止を重視する考えを示した。こうした首相の姿勢に、共産党の田村智子委員長は「被爆者の願いを踏みにじるものだ」と指摘した。 　◇野党足並みそろわず 　野党各党からは、遅々として進まない選挙区候補者調整の食い違いがあらわになった。 　立民の野田氏は維新、共産、国民3党に裏金議員の選挙区での一本化を提案しており、「最後まで粘り強く、チャンスがある限りやり続けたい」と訴えた。 　しかし、共産の田村氏は野田氏が安全保障法制の「即時廃止」に距離を取っていることに「共闘の基盤が損なわれている」と不信感をあらわに。「裏金追及の先頭に立ってきたのは共産党だ。共産候補を降ろすのを前提に話が進むのはいかがなものか」と引かなかった。 　選挙後の自公との関係を問われた馬場氏は「政治は数が力。それぞれの議席数が、今後の判断に大きく影響するのは間違いない」と政権参加の可能性を否定せず、国民の玉木氏も「今言えるのは、政策を進めていくところで一致できれば協力する」と言い切った。