笑顔を見せながら練習に臨む阪神秋山（撮影・前田充）

　阪神は13日、秋山拓巳投手（33）が今季限りで現役を引退することを発表した。近く、会見を開く。球界屈指の制球力を武器に、3度の2桁勝利を挙げ、先発の主力として通算49勝をマーク。“伊予ゴジラ”の異名も取った力強い打撃でも魅了した。ただ18年に半月板を除去した右膝の状態が思わしくなく、今年は1軍登板なし。惜しまれながら、タテジマ一筋15年間の現役生活に別れを告げる。 【写真】練習を終えファンにサインする阪神秋山 　　　　◇　　　◇　　　◇ 　虎の精密機械がマウンドを去る。前日12日に引退を決断した。鳴尾浜球場で練習を行った秋山は「寂しいけど、最後まで今まで通り頑張ろうと思う。開幕前から今年ダメだったら（引退）という気持ちだった。膝の状態も良くなりそうにない」と理由を明かした。 　高卒1年目から完封を含む4勝。17年に12勝と飛躍したが、その後は右膝の痛みとの闘い。18年10月に外側の半月板を除去する手術を受け、膝のクッションがなくなった。軸足で真っすぐ立てず、テーピングで固めて投球してきた。「もう元に戻らない。人工関節を入れるしかないと言われています」。球速も上がらなくなったが技巧をこらして20年、21年と2桁勝利。ランやウエートトレを一部制限しながら筋力をつけてカバー。壮絶な努力だった。 　“伊予ゴジラ”の異名を取り、高校通算48本塁打。左打席から繰り出す打撃はパワフルでプロでも2本塁打をマークした。その陰で右膝は悲鳴を上げ続けていた。「1回もスッキリすることはなかった。ただ、手術しなかったら、たぶんもっと早く終わっていたので、手術してからも頑張れたかなと思います」。この日の練習前、2軍投手たちに引退を報告。「結果の世界なので、頑張って上（1軍）でやらないと、こうやって野球ができなくなるよ」とメッセージを送った。 　ラストを覚悟した15年目。「野球ってやっぱり楽しいっす」といつも笑っていた。「膝はこんな状態だけど、何とか試合で投げられるんだから。やって当たり前です」。2倍近くに腫れた膝をいたわるようにさすり、投げる場所があるありがたみを強調した。少しの体調不良やケガでも無理をしないのが時代の流れ。33歳は潮流にあらがって、闘う姿を後輩に見せてきた。 　昨年は開幕2戦目を託されたが、今季は15年目で初めて1軍登板なく、2軍でローテを回る。ウエスタン・リーグの通算投球回は1軍を上回る997回2／3。先発の誇りを胸に投げ続けてきた勲章だ。「わがままを言って1000イニングをクリアさせてくださいとお願いしました。頑張ってきた証し、ではないですけど」。残り登板は2試合を予定。生涯タテジマを全うし、全力で駆け抜ける。【柏原誠】