「先天梅毒」の子どもの数が過去最多に、梅毒の妊婦から胎児に感染
国立感染症研究所は、梅毒に感染した妊婦から母子感染した「先天梅毒」と診断された子どもの数が、2023年10月4日時点で32人となり、現行の統計開始以降、最多となったことを明らかにしました。このニュースについて郷医師に伺いました。 [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]
国立感染症研究所が明らかにした内容とは?
編集部: 今回、国立感染症研究所が取りまとめた内容について教えてください。 郷先生: 今回取り上げるのは、性感染症の一種である梅毒に感染した妊婦から、胎児に母子感染する先天梅毒と診断された子どもの数についての調査です。国立感染症研究所が発表した今年第3四半期までのまとめでは「10月4日までに先天梅毒と診断された子どもの数は、全国で32人となった」と発表されました。現在の形で統計を取り始めてから最も多かった2019年の23人を上回って、過去最多の患者数が確認されたことになります。今年もまだ約1カ月半残っているので、患者数はさらに増える可能性があります。 先天梅毒になると、生まれてすぐの時期に発疹が出たり、骨に異常が出たりするだけではなく、数年後に目の炎症や難聴などの症状が出ることもあります。2023年11月8日にまとめられた報告によると、2023年の梅毒の感染者数は累計で1万2679人確認されているとのことです。梅毒の患者数については、2018年をピークに右肩上がりで増加していましたが、2019年と2020年には減少傾向になっていました。しかし、2021年に急増して過去最高を記録し、2022年には初めて患者数が1万人を超えました。
梅毒とは?
編集部: 梅毒について教えてください。 郷先生: 梅毒は、他人の粘膜や皮膚と直接接触するなどの性的な接触などによってうつる感染症です。「梅毒トレポネーマ」という病原菌が原因で、症状として出てくる赤い発疹が楊梅(ヤマモモ)に似ていることに病名が由来しています。梅毒に感染したかどうかは、医師による診察と血液検査(抗体検査)で判断します。 梅毒の治療方法は、外来で処方された抗菌薬の内服が一般的で、内服期間などはステージによって異なるため医師が判断します。病変した部位によっては入院して、点滴で抗菌薬の治療をおこなうこともあります。検査や治療が遅れたり、治療せずに放置したりすると、長期間の経過で脳や心臓に重大な合併症を起こすことがあります。