アンカーの最上位ロボット掃除機はルンバ コンボより多機能!?
充電ドックがコンパクトで、アプリも分かりやすい
Eufy X10を自宅に設置してまず感じたのが、充電ドックのコンパクトさだ。ハイエンドモデルの充電ドックは多機能で「全自動クリーニングステーション」などと呼ばれ、水拭きやモップ洗浄用の水を入れる「浄水タンク」と洗浄後に汚れた水をためておく「汚水タンク」、モップ洗浄ユニットなどが搭載されるため、サイズが大きくなりがち。しかしEufy X10の充電ドックは幅36.6×奥行き48×高さ46cmと、他メーカーよりも幅などが小さめだ。例えば、S8 Pro Ultraの充電ドックは、幅42.6cm×奥行き51.4×高さ45cmある。 コンパクトにできた理由の1つは、浄水/汚水タンクの容量が少ないこと。他社では4L/3.5L程度のタンクが多いが、Eufy X10は3L/ 2.7Lと2割以上少ない。容量が少ないと交換頻度は多くなるが、個人的にはこれくらいの方が給排水のときに重い水を運ばずに済むのでよいと思う。また、タンク全体を覆うカバーなどがないのも、コスト削減に寄与していそうだ。ただ、カバーがあった方が見栄えはよいので、インテリアにこだわる人はマイナスに感じるかもしれない。 本体をWi-Fiに接続し、スマホアプリを操作して、一通り自宅を掃除してみた。ハイエンドモデルはアプリの表示が複雑になりがちだが、Eufy X10のアプリ表示は分かりやすく、迷うことはほとんどない。最初の30分程度の掃除で、リビングからキッチン、廊下、洗面室と、1階の掃除を終え、アプリ上に正確に間取り図を描き出すことができた。 基本的に、間取りや障害物は掃除機本体のカメラやレーザースキャナーで識別している。メーカーによっては、掃除中にカメラに映る映像をスマホアプリで見られて、外出先から現在の掃除状況を確認したり、留守番中のペットの様子を見たりできる。ペットを飼っている筆者は好きな機能だが、Eufy X10にはない。またルンバなどが搭載している、掃除中に見つけた障害物の写真をマップ上で表示する機能もない。これらの機能は掃除とは直接関係ないため、割り切られたのかもしれない。 1つ気になったのは障害物を回避する機能の精度。100種類以上の障害物を認識できるというが、掃除中、ソファや棚の下にあるコードは認識できないことがあった。現状では、掃除を始める前にコードを移動したり、床に落ちている物を片付けたりしたほうが安心だ。 ●吸引力は十分に強く、カーペットも自動で検知 掃除機の動きを観察してみたところ、壁際に沿って輪郭を描くように走った後、その内側を埋めるように往復しながら掃除していた。ダイニングテーブルと椅子の脚を上手に通り抜けられるか心配だったが、掃除しながらクルクルと回り込み、通れる場所を根気よく探して無事脱出できた。過去に筆者が試した他社の上位機にも見劣りせず、スムーズに動けていたと言える。 吸引力は8000Pa(パスカル)と同社のロボット掃除機では過去最大。吸引力の数字を公表している他メーカーの機種と比べても引けを取らない。実際、Eufy X10が通った場所の吸い残しはほとんどない。カーペット上にペットの毛をまいたテストでも、しっかり吸い取れていた。 なおブラシには毛が絡まりづらくなる「毛がらみ除去システム」が搭載されているが、筆者の自宅のペットの毛は多少絡まった。ある程度の手入れは必要そうだ。 水拭きでは、2つのモップにそれぞれ約1kgの圧力を加えて拭く「加圧式デュアル回転モップ」を採用。Eufy X10が通った後はしっかり水拭き跡が残り、乾いた後は床の感触がサラサラになる。ザラつきや皮脂汚れが除去できているのが実感できた。写真のヨーグルトの他、試しにドレッシングをこぼして掃除させてみたが、1回で油分もきれいに落とせた。さすがに床に塗り付けた歯磨き粉は落とせなかったが、日常的な汚れなら問題なさそうだ。 またEufy X10は、カーペットを検知すると、ぬれないようにモップを自動的に12mm持ち上げて、吸引のみを行う。筆者の自宅のリビングで使っている毛足の短いラグは問題なかったが、毛足が長いラグだとぬれてしまう可能性もある。その場合はアプリから進入禁止エリアとして設定すればよい。 Eufy X10は、20万円クラスのロボット掃除機と比べれば、タンク容量や障害物回避性能など細かな違いがあった。しかし、基本的な掃除性能は高く、カーペットや間取りの自動識別機能は問題なく動作するし、アプリや充電ドックは使いやすい。手間なく1台で掃除を済ませたい人にとって、かなりの高コスパモデルと言える。
田中 真紀子