8月の企業倒産は746件、28カ月連続で前年同月を上回る 8月としては過去10年で最多 ― 全国企業倒産集計2024年8月報
負債総額は2カ月ぶりに前年同月を下回る
2024年8月の倒産件数は1.倒産件数は746件(前年同月742件、0.5%増)と、28カ月連続で前年同月を上回った。8月としては、前年(742件)を超え、過去10年で最多となった。2.負債総額は927億5900万円(前年同月995億100万円、6.8%減)と、2カ月ぶりに前年同月を下回った。負債額トップは、鋼船製造・修理を行っていた㈱クレサービス(旧:㈱神田造船所、広島県、特別清算)の109億4700万円だった。 業種別にみると、7業種中3業種で前年同月を上回った。『サービス業』(前年同月187件→197件、5.3%増)が最多。増加率でみると、『卸売業』(同79件→96件、21.5%増)が最も高かった。『小売業』の「飲食店」(同56件→72件)や『卸売業』の「飲食料品卸売」(同13件→32件)が増加し、食品関連の倒産が目立った。
「物価高倒産」過去最多ペース、1割超の企業が「全く価格転嫁できず」
帝国データバンクが8月28日に発表した「価格転嫁に関する実態調査(2024年7月)」によれば、コスト上昇分に対する販売価格への転嫁度合いを示す「価格転嫁率」が、過去最高の44.9%となったことが分かった。前回調査(2024年2月)から4.3ポイント上昇するなど少しずつ転嫁が進んでいるものの、依然としてコスト上昇分の5割以上を企業が負担する状況に変化はなく、1割を超える企業が「全く価格転嫁できない」状況が続いた。 企業の現場からは「これ以上の価格転嫁は難しい」との声も多いなか、8月の「物価高倒産」は64件判明。過去最多の年間件数を更新するペースで推移しており、このうち、十分な価格転嫁ができず経営破綻に至った「値上げ難型」の倒産が12件を占めた。倒産全体の約1割を物価高倒産が占めており、各種原材料の高騰による中小企業への影響には引き続き警戒が必要だ。
M&A関連のトラブル表面化、信用調査に万全を期す必要性
中小企業がM&A関連のトラブルに巻き込まれるケースが複数表面化している。具体的には、買収後に現金等の資産を会社から抜き取り、約束した経営者保証の解除も行わないまま、会社を放置するなどの行為が問題になっている。これを受けてM&A仲介協会は8月26日、中小企業の事業再生や事業承継等を狙った“悪質な買い手企業”をリスト化し、会員間で共有すると発表。中小企業庁も同月30日、「中小M&Aガイドライン」の改訂内容を公表した。 後継者問題を背景に中小企業のM&Aが広がるなかで、悪質な買い手に買収され、資産流出の末に倒産に追い込まれた中小企業も複数判明している。意図せずトラブルに巻き込まれないためにも、買い手側の信用調査に対し万全を期す必要がある。