進学校の遊撃手は今宮健太と近藤健介の〝ハイブリッド〟 今秋の福岡大会4強入りに貢献【トマスさんの特命リポート】
九州の高校球児情報に精通したアマ野球ウオッチャー「トマスさん」が丹念な取材でリストアップした好選手を紹介する「特命リポート」―。今回は、福岡県内で屈指の進学校として知られる修猷館高の尾辻佑晟(2年)を紹介する。今秋の九州地区高校野球福岡大会で4強入りしたチームを引っ張ったのは、地元・福岡ソフトバンクの主力の持ち味を掛け合わせた逸材だった。 ■センバツに出場するのは!? 秋季九州大会全結果はこちらから 昨夏より「修猷館の遊撃手がいい」と小耳にはさんでいた。今夏、X(旧ツイッター)で九州圏内を中心にアマチュア野球の有力情報を発信する「ゆきと」さんによる「(2年生ながら)福岡一の野手」のコメントもあった。「急がなければ」。8月18日、嘉穂高グラウンドに足を運んだ。 お目当ての2年生は171センチと小柄だった。私見だが、大型遊撃手として活躍するデレク・ジーター(元ニューヨーク・ヤンキース)の出現以降は「牛若丸」と称された吉田義男(元阪神監督)のような小兵遊撃手が減少の一途をたどっている。自身も小兵のトマスは「牛若丸派」。福岡ソフトバンクファンだという尾辻の好きな選手も、自分と重ね合わせて「小兵派」という。「守備なら今宮健太さん。打撃では近藤健介さん」となる。 この日の試合では、長打も含めた広角打法の〝ミニ近藤健介〟といえる活躍を見せた。無死一、三塁での第3打席。「まっすぐ狙いで反応できた」と内角低めのカーブをしなやかに振りぬいた打球は、右越え本塁打となった。次の打席は中前にはじき返した。この時点で通算3本塁打だったのが、既に増産中だ。波多江憲治監督の「体を大きくして低反発バットにも対応しよう」のアドバイスにて、茶わん1、2杯だった食事量を倍にしたことも実った。 11月3日、尾辻はオーストラリア遠征する福岡県選抜の一員として、嘉穂東高グラウンドで行われた同校との練習試合に出場。今度は〝ミニ今宮健太〟になった。 「下から包み込むように(捕球し)、上からたたきつけるように(送球する)」。意識づけられた守備は柔らかい。守備機会は2度あった。特に三塁寄りの打球を逆シングルで捕球した後の身のこなしに、福岡県選抜の益田和毅監督(嘉穂東)とともにうなった。もっとも、尾辻は満足していない。「(手首のスナップをきかせ)地をはうような伸びる球を投げたい」。普段のキャッチボールから意識づけして取り組んでいる。 九州外の甲子園常連校からも勧誘があった中、修猷館を志望した。「もし、野球で高校や大学に進学できたとしても、その後の姿が想像できなかった。野球を終えた後の将来を考えると、勉強して選択肢を増やしたい」。野球と勉強の切り替えを素早くし、集中力を研ぎ澄まし、東京六大学などの強豪への進学を目指している。 個人的には、元祖の「牛若丸」には長打力のイメージがない。尾辻のことは「ハイブリッド型牛若丸」と称したい。京都の五条大橋の欄干を飛び、神宮の杜に飛び込んでほしい選手だ。
西日本新聞社