【遺族厚生年金】5年間で給付打ち切り、中高齢寡婦加算も廃止検討で改悪か?改正ポイントをわかりやすく解説
現在年金トピックのなかで最も注目を集めているのが「遺族年金の改正」です。国の社会保障審議会では、昨年ごろから改正に向けた本格的な議論がされています。 ◆【写真2枚】現行の遺族年金と改正後の遺族年金、どう変わる?図表でチェック 遺族年金の改正については、SNSでもさまざまな意見が噴出。なかには、内容を誤解しているような意見も見られました。果たして、遺族年金は現在どのような点が問題となっており、どう改正される予定なのでしょうか。 この記事では、遺族年金の改正について、理由や現行制度の問題点、改正案の内容について解説します。遺族年金の現状と今後の展望をおさえて、改正内容を正しく理解しましょう。 ※編集部注:外部配信先ではハイパーリンクや図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
どうして遺族年金が改正となるのか
遺族年金の改正が急ピッチで議論されているのは「制度内容が時代にそぐわない」ためです。特に遺族厚生年金は、男女による受給要件の違いや子どもの有無による受給期間の違いがあるため、現代においては受給できない人が増えることが懸念されています。 また、女性の就業率の増加や共働き世帯の増加も、遺族年金見直しの要因となっています。総務省の「労働力調査」によれば、2023年の女性の就業者は3051万人で、全体の45.2%を占めているとの結果が出ました。前年に比べて27万人増加しており、より多くの女性が社会で活躍していることがわかります。 共働き世帯は、厚生労働省の「令和5年版 厚生労働白書」によると1262万世帯となっており、片働き世帯539万世帯の2倍以上もの数となっています。 こうした時代背景に合わせて、制度も変化していく必要があることから、国の社会保障審議会年金部会では、遺族年金の見直しについて盛んに議論されているのです。 では、現行の遺族年金にはどのような問題点があるのでしょうか。次章で解説します。
遺族年金の問題点と現行制度
遺族年金の問題点は、遺族厚生年金において男女による受給要件の差が発生していることです。受給要件の差とは、具体的には以下のことを指します。 ・夫を亡くした妻は30歳未満であれば5年間の給付、30歳以上であれば終身の給付を受けられる。また、夫を亡くしたときに40歳~65歳未満の場合に子がいない場合は、中高齢寡婦加算が支給される。 ・妻を亡くした夫は就労して生計を立てられることから、子のない夫は55歳になるまで受給権を得られない。また、中高齢寡婦加算に該当する制度も存在しない。 現行の制度は、夫と妻とで給付タイミングが大きく異なります。夫を亡くした妻の遺族厚生年金は5年間の有期給付か終身給付で、要件に合致すれば受給できます。一方、子どものいない夫は要件を満たしても55歳にならないと受給権を得られません。さらに、実際の受給は60歳以降となるため、受給できる最短のタイミングは老齢年金とほぼ変わりません。男性のほうが、遺族年金を受給できる時期がはるかに遅いのです。 また、妻が夫を亡くした時点で40~65歳未満の場合は、中高齢寡婦加算が支給されます。しかし、夫には受給権が発生しないため中高齢寡婦加算のような加算額の支給がありません。加算の有無により、支給額も男女によって大きな差が生まれやすいのが現状です。 この中高齢寡婦加算は、男女の公平性に乏しい制度で、廃止も検討されています。中高齢寡婦加算については、次章でより詳しく解説します。