「SNS詐欺広告」に画像を無断使用される森永卓郎&康平親子の地獄
森永康平氏も「ふざけるな、と思いました」と話す。 「彼らも掲載料として詐欺広告から利益を得ているのだから、ちゃんと対応しなければならないのに、この声明はありえない。このまま態度が変わらないのであれば、運営会社が厳しい対策を取らざるをえない法改正などが必要になると思います」 なぜメタ社は責任を認めようとしないのか。ITジャーナリストの三上洋氏は、その理由を次のように指摘する。 「SNSは広告収益が生命線ということもありますが、メタ社のようにグローバルに展開するアメリカのIT企業にとって、これはアジアの辺境で起こった事件に過ぎず、そもそも関心が薄い。だから、日本で報じられているほど深刻にはとらえていないのです」 ■救済を求めた先でさらなる詐欺に遭う 三上氏が続ける。 「AIの発達で、精巧なフェイク画像や動画を作ることが容易になり、詐欺広告の急増に対策が追いつかない、という現実はあります。ただ、SNSが実際に数百億円もの詐欺被害の入り口になっており、運営会社も詐欺広告から利益を得てしまっている以上、これは明らかに詐欺幇助です」 そもそも、なぜ投資詐欺はSNSで急増しているのか? 「実はSNSを経由した投資詐欺事件は今に始まったことではありません。恋愛感情を詐欺の手段として利用する『ロマンス詐欺』が原点です。 SNSを通じてつながった外国人が、『日本に会いに行きたいから旅費を送ってほしい』『移住の手続きに費用がかかる』などと偽り、相手の日本人からおカネをダマし取るというのが手口で、海外の詐欺グループが主犯でした。 しかし、この手口は2020年の春前頃から使えなくなりました。コロナ禍で世界的に旅行ができなくなってしまったからです。そこで詐欺グループは、『ふたりの将来のために』とニセの投資サービスに勧誘する手口を編み出しました。ここからより幅広い層にアピールできる手段として発展したのが、SNS投資詐欺です」 バブル以降の最高額を更新する空前の株高や新NISAの開始による投資人気の過熱も、詐欺被害を拡大させた。 「最初から投資を募る名目になったことで、この手口は従来のロマンス詐欺に比べ、短い期間で高額なおカネをダマし取ることに成功しました。 さらに、その手口も進化し続けています。AIを活用した広告からLINEグループに勧誘し、直接のやりとりに持ち込みます。最初は少額の投資で儲けさせて信用を得て、それから大きな金額の投資を持ちかける。 そして、お金が振り込まれたら連絡を断つのです。そのため、今回の詐欺では1件当たりの被害額が大きく、数千万円から億単位の被害に遭った人もいます」 しかも、失ったカネを取り戻そうと弁護士に依頼した先で、2次被害に遭うことも増えているという。 「投資詐欺の被害金を取り戻すからと、法外な手数料をダマし取る弁護士や司法書士をかたる詐欺が増えています。そこに登場する弁護士らの多くは悪徳業者への名義貸しをしていて、中には弁護士会から懲戒処分を受けたものの、いまだ広告を掲載している人もいる。決して安易に飛びつかないようにしてください」 詐欺被害の救済を求めた先で、さらなる被害に遭う地獄。フェイスブックやインスタがその悲惨な被害の入り口となっている以上、メタ社は一日も早く抜本的な対策をすべきだ。 取材・文/小山田裕哉 写真/時事通信社