瞬間最高視聴率は“驚異の55.9%” 中嶋聡オリックス前監督の大一番「小林の14球」を振り返る【日本シリーズ伝説の一戦】
最後の決め球は…
しかし、ポール際をわずかに切れてファール。ベンチから身を乗り出していたヤクルトナインに笑顔と落胆の表情が入り混じる。だが、マウンドの小林は冷静だった。気持ちが集中していると、やじや歓声も気にならなくなるというが、この時の小林がまさにそうだった。8球目のファールのあと、9球目はシュートが外れてボール。2-2になったところで10、11球目とファールで粘られる。そして12球目、これもライトスタンドへ飛ぶ大きなファールとなった。 「オマリーは粘りますが、手づまりなスイングが多いとバッテリーは感じていました。とにかく怖いバッターですが、決して負けてはいないと」(同) 13球目、インコースのスライダーがボールに。オマリーの選球眼は見事だ。ここでようやくフルカウントに。“勝負球”で中嶋氏が要求したのはもちろん、ストレート。オマリーの狙いも同じだったというが、バットは空を切り、空振り三振。小林が投げた14球のうち、ストレートは11球だった。すべて、中嶋氏のサイン通りに投げたという。 「12回の表に4番D・Jがホームランを打って勝ち越し、オリックス勝利で試合を終えました。オマリーの打席からD・Jの勝ち越しホームランまで、テレビ中継の瞬間最高視聴率は55.9%を記録しました。数千万人のファンがこの試合を見たのです。まさに伝説の試合となりました」(同) 選手だけでなく監督としても、日本シリーズの名勝負に立ち会った中嶋氏は今年でユニフォームを脱いだが、必ず復帰して、最高に面白い野球をまた見せて欲しいものだ。 デイリー新潮編集部
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