親が「やってはいけない」令和時代の子育て、能力を「奪う親」と「伸ばす親」の決定的な違いを専門家が解説
困難にも勇気をもって踏み出せる「冒険力」を身につけよう
――令和の親たちに伝えたい想いがありますか。 矢野:今の親たちは情報収集は上手ですし、ネットを利用したコミュニティもしっかり作り上げて、ムダを嫌います。だから、子どもにも合理的に最短距離を走らせたいと願います。 でも、実は意外にムダなことのなかには大事なことがたくさんあるんです。できないことにチャレンジする、失敗する経験も大事。子どもが嫌がることを避けてばかりいると、ストレスに弱い子どもになってしまう恐れがあります。 逆に言うと、できない期間が長いほど、できたときには感動も大きく、奇跡を呼ぶこともあります。それはまさに親子で成長できる機会でもあるのです。親が先に課題を取り除いてしまうと、子どもができないことに向き合う力が弱くなってしまうこともあるのです。 成功するかどうかはわからないけれど、まずはやってみよう。そんなふうに行動し、挑戦する力を、私は「冒険力」と名づけています。「冒険力」は、今、社会で大人に必要とされているレジリエンスと言い換えることもできるでしょう。 「冒険力」を身につけていれば、困難にぶつかっても勇気をもって一歩を踏み出すことができます。知らない道でもワクワクしながら進んでいける。「冒険力」は子どもの未来を支える武器になるでしょう。幼児期なら、家庭生活の中で、親子が一緒に楽しみながら身につけることができるのです。 ――子育てで親が気をつけたいポイントは何でしょう。 矢野:親自身が自信をもって子育てしてほしい。もし間違えてしまったら、違うやり方をすればいいんです。間違えること、できないことを恐れずにやってほしいなと思います。 ――そう言われると、なんだか肩の荷が下りますね。 矢野:そうそう、「子育てはしっかりやらなければいけない」という呪いの言葉にとらわれてはいけません。そんな言葉に縛られず、「よい加減」で子育てしましょう。 そして、子どもの成長は「横」ではなく「縦」で見るようにしましょう。「横で見る」とついつい他の子と比較してしまいがちです。 そうではなく、子どもの成長は「縦で見る」ことが大切です。「昨日よりも今日のほうができた」「先週よりも今週の方が上手になった」「先月よりも今月」「一年前より今」……。そうやって、子どもの成長を縦の時間軸で把握する。 そして、「昨日はできなかったけれど、今日はできるようになったね!」と、言葉に出して褒めて認めてあげる。その積み重ねが、やがて最終ゴールである「すてきな大人」に成長していくことでしょう。 …つづく、矢野文彦さんの連載「慶應、早稲田、青学、雙葉「小学校の最難関校」が、これからの受験で求めている「4つの力」…平成とはココが違う」では、平成と令和の受験の違いを取り上げつつ、学校が子どもと家庭に何を求めているかをお伝えしています。 聞き手/高木 香織
矢野 文彦、高木 香織