「ロレックス賞」2023年度受賞者、空気から安全な飲料水を抽出 ケニアで活動
■女性職人をエンパワーし、自然と工芸文化を守る
スッカチッタは、ファッションブランドというよりも、文化と環境への取り組みであり、女性たちをエンパワーする運動そのものだ。 繊維産業の強国でありながら、インドネシアの綿花栽培量はごくわずか。国内で扱う綿のほぼすべてが、有害な化学薬品を多用して巨大な農場で栽培された輸入品に頼っている。 そうした状況に異を唱えるスッカチッタの活動は、サステナブル(持続可能)な方法によりインドネシアの小規模農家で調達されたコットンからはじまる。 生物多様性を維持し土壌の健康を回復させる、環境再生型農業を実践するコットンの栽培農場と直接提携。農家の女性たちが収穫し、紡ぎ、織り出した後、コットンは天然由来の染料で着色される。
■工芸学校も創設 女性たちのビジネススキル向上支援
さらにスッカチッタは、活動する村に工芸学校を創設した。女性たちはクラフト技術やデザインだけでなく、製品の収益化を促すビジネススキルを学ぶことができる。 今回のロレックス賞の受賞によって、環境再生型農業の知識をトレーニングするアプリを開発し、また、学校をスケールアップできるとリアディニ=フレッシュさんは期待する。 「スッカチッタのプロジェクトは、女性と自然を最優先に決断することで何が達成できるのかを私に示してくれました。この賞によってカリキュラムをデジタル化して、インドネシア全土のより多くの女性たちにリーチすることができるでしょう」 ◇ ◇ ◇
■未来に向けて 誰でもどんなことでも変えられる
“ANYONE CAN CHANGE EVERYTHING" ──未来の先駆者たちへ、この揺るぎないメッセージが掲げられているロレックス賞。 この先も2年ごとにさまざまな受賞者たちが現れ、世界をよりよいものへと変えてくれるのだろう。今後もロレックス賞というフィルターを通し、人類に恩恵をもたらすパイオニアたちに注目したい。そして、進取の気性を育み続けるロレックスのウオッチメーカーとしての「今」からも目が離せない。
■ロレックス、その果てなきチャレンジ精神
ロレックスの果てなきチャレンジ精神は、現代の「オイスター パーペチュアル」にも存分に発揮されている。 たとえば2023年に発表された話題作のひとつは、5色のドットをちりばめたラッカーダイヤル、その名も「セレブレーション」モチーフ。ロレックス賞発足の原点となった名作は、自由と遊び心をまとったポップアイコンへ生まれ変わった。 まもなく2024年4月9日から、世界最大の高級時計の見本市「Watches & Wonders Geneva 2024(ウオッチズ&ワンダーズ ジュネーブ2024)」が開催される。 スイス・ジュネーブで新たに披露される、ロレックスの意欲作の数々にも期待したい。それらはきっと、ロレックス賞の受賞者たちに通じる、進取の気性や革新性を宿しているに違いない。 文:愛甲悦子(ファッション・ジュエリー&ウオッチエディター)
愛甲悦子
『家庭画報』『VOGUE JAPAN』『Harper's BAZAAR』などにおいてファッションエディターとして13年間の出版社勤務を経て、2010年に渡独しフリーランスに。エディター・ライター歴は25年以上。ドイツ・ケルンを拠点に女性誌の取材・撮影や、広告・カタログを手がける。 ※この記事は「THE NIKKEI MAGAZINE」の記事を再構成して配信しています。