「何十年前?」職員室のDX化が進まない「なぜ」 生徒にとっても貴重な日々が奪われていないか
教育現場のDX化は、教員の過多な業務を改善する方法の一つです。実際にデジタル機器の活用などで教員の働き方改革に一定の成果が出ている学校もありますが、その進展には差があるのが現状です。しかしDX化を迅速に進めなければ疲弊する教員は増える一方で、子どもたちにも影響が及ぶ恐れがあります。ではなぜDX化は進まないのでしょうか。朝日新聞取材班による書籍『何が教師を壊すのか 追いつめられる先生たちのリアル』から一部を抜粋し、その理由に迫ります。 【図表】子どもが学校を休むときにWeb連絡できたら助かると思う保護者は多いはずだが、欠席連絡をデジタル化している学校は半数に届いていない
本記事は3回シリーズの3回目です。 (1)「先生が壊れる」若手教員に病休者が多い深刻事情 (2)「これって教員の仕事?」疲弊する先生のリアル ■デジタル機器が充実しても進まない改革 「何十年前の働き方なのか」 東北地方の複数の公立校で支援員をしている40代女性は2021年、ある光景を目にして驚いた。勤務校の一つに出勤したときのことだ。 職員室の机の上に資料がきれいにまとめて置いてあった。聞くと、教頭が教育委員会からくる大量のメールの添付ファイルをプリントアウトし、先生の人数分コピーして机に置くのだという。
教頭は毎朝、この作業に1時間かけているらしい。クラウド上にファイルを置いて各教員が見るようにすれば、数分で終わる作業のはずだ。民間などで普通に行われていることだ。 気になるのは、それだけにとどまらない。 例えば、家庭に書いてもらうアンケート。まず教務主任がアンケートの質問文を印刷し、職員室にある各クラスの配布物ボックスに人数分の紙を入れる。 クラス担任はそれを子どもに配布し、手書きしてもらって回収する。よく紛失するので、配る作業は大抵、何度も発生する。
回収したら、それを担任が表計算ソフトに入力する。この作業だけでも3時間ぐらいかかる。いまやオンラインのアンケートフォームは、無料アプリで簡単に作れる。 女性はそう考えて改善を提案した。だが、年配の教員から「面倒くさい」「これまでのやり方の方が早い」と言われてしまった。 子どもの学習評価などを書き込む「指導要録」は、すべて手書き。通知表のもととなる公文書だが、通知表とは違って原則外部が目にすることはない。