オードリー・タン氏実践「睡眠記憶法」の超合理性 睡眠の効能を最大限活用する徹底した工夫
知識系の本、特にページ数が多く事実を整然と描写するタイプの本は、通常なんらかの観点に基づいて記述されている。もし一字一句に主観で反論していたら、最後まで読んでも本の観点は頭に入ってこない。いくら読んでも自分の養分にはならないし、睡眠を通じて読書の記憶が強化されることもない。 「筆者の観点でものを見ることをせず、自身の論点の確認に終始するのは、砥石で主観に磨きをかけているのに等しいことです」 本を相手に論争すれば、筆者がそこにいない以上、必ず勝てると決まっている。
「自分とは異なる観点でものを見る力があれば、複雑な論点もより深く理解することができます」 眠る前に知識系の本を集中して高速で読む。途中で読むのを中断して考えることはしない。判断も批判もせず、一気に大量の情報をインプットしてから十分な睡眠をとる。そうすれば、目覚めたときに「筆者は筆者、自分は自分」と感じることはない。本の内容は自ら使いこなせる知識として取り込まれ、自分自身の思考の一部となる。これが最大のポイントだ。
目覚めている間の私たちは、特定のやり方やいつもの行動に固執し、自分なりの観点で物事を見てしまいがちだ。しかし、夢のなかでは自我が比較的弱いため、一つの物事を多角的に見ることができる。 ■批判せずに読むためのトレーニング法 とはいえ、批判せず集中して読み続けるには訓練が必要だ。では、どう訓練すればいいのか? オードリーが提案する練習方法は、日中ほかの人と会話しているときに、相手の話を頭のなかで止めないよう努めることだ。
たとえば、誰かの話を聞いているときには心を完全に開放して聞く。100パーセントの意識を相手に向け、相手が話す内容を先回りして推測しない。最初は自分を制御するのが難しいかもしれない。ならば、まずは一定の時間を設定してみる。 10分間は話を邪魔しないことを相手に約束し、10分が過ぎたら聞いた内容を簡単にまとめて伝える。その間、相手にも話を邪魔しないようお願いする。伝え終わったら、自分のまとめが正しいかどうか相手に尋ねる。いわゆる「積極的傾聴法(アクティブリスニング)」と呼ばれるもので、訓練を通じて習得することができる。