平凡でも特別でも学生時代は生きづらい――尾崎世界観と花澤香菜が回想する、中高生時代の「どうにもならない日々」
「生きづらさ」がクローズアップされがちな昨今だが、今をときめく人気者でも例外ではない。2013年以降のオリジナルアルバムはすべてベスト10入りし、2014年と2018年には日本武道館公演も成功させた人気バンド・クリープハイプのボーカル・尾崎世界観。『化物語』の千石撫子役や『ニセコイ』の小野寺小咲役など、数々の作品で人気を集める声優・花澤香菜。若い年代のファンから熱烈な支持を受けているふたりが、幼少期から抱えてきた「違和感」を振り返った。(取材・文:山野井春絵/撮影:稲垣謙一/Yahoo!ニュース 特集編集部)
「自分と遊んでて、この人、楽しいかな?」
花澤 尾崎さんは、どんなお子さんだったんですか? 尾崎 変な子どもでしたね。同級生と遊ぶのがつまらなかったんです。公園で遊ぶとか、家に行ってゲームをするとか、決まったことしかしてないなと思って。一緒にいても、「自分と遊んでて、この人、楽しいかな?」と思ったり。でも、大人の話は面白く聞いていました。父親が仕事から帰ってくると、母親に「電車でこんな人がいた」とか、仕事のこととか、そういうのをいろいろ話していて。早くもっと理解したいし、そういう話ができるようになりたいなと思っていましたね。そういう違和感を持ちながら友達と一緒にいて、自分はちょっとおかしいんじゃないかなと不安でした。
花澤 面白い! 尾崎さんのそういう下地が、音楽だけじゃなくて文章の肥やしにもなってきたんでしょうね。 尾崎 花澤さんは子役からスタートされているので、幼い頃から目立って元気な子だったのでしょうか? 花澤 小さいときは目立ちたがり屋で、すごく生意気だったと思います。子役は特別なことをしているという感覚があって、あるとき仕事の内容を友達に言ったら、「香菜ちゃんが自慢してきた」って広まって、そこで「ああ、これはまずい」と思ったんです。そのときから急激に、目立たぬように……と気をつけるようになりました。高校生のときには、同級生にはっきりと「香菜みたいにはっきりしない子は嫌い」って言われたこともあるくらい。 尾崎 目立っても、おとなしくしても叩かれてしまう、大変だ(笑)。 花澤 なんか反抗期もなく育ってきたんですよ。言いたいことを言葉にするのが難しくて、「目立つぐらいだったらおとなしくしていよう」みたいな感じだったので。 尾崎 それでも、やっぱり表現者としての仕事を選んだんですね。 花澤 はい。高校生の頃は、仕事ももうポツポツという感じで、大学で新しいことをはじめようかな、と思ってました。アニメのレギュラー仕事があったんですが、そこに「もう仕事は全部辞めます」と伝えたら、「声がいいから辞めないで」って止めてくださった方がいて。私はそれまで、「おまえの代わりはいくらでもいるから頑張れ」みたいな言われかたが多くて、あまり「いい」って言われたことがなかった。「こんな私を必要としてくれる人がいるなら」とハッとしました。その止めてくれた方が、たまたま声優事務所の人だったので、そこから声優人生がスタートしたという感じなんです。