「不透明な2025年」を前に…日中外相会談をウォッチャーが読み解く
つまり、中国のマスコミ報道やネット情報にある悪いイメージの日本と、実際に体験した日本という国、日本人のイメージは違うわけだ。百聞は一見に如かず。富裕層に、日本でブランド品を買ってもらうことも大切だけど、富裕層に限らず「中国の皆さん、一度日本に来てみませんか。自分の目で見てください――」ということが大事。ビザの緩和で、双方とも経済、人的交流、そして互いの理解も拡大したい考えだ。 ■関係改善へと動き出したとはいえ不透明な2025年 とはいえ、日中関係は一足飛びに改善へ向かうとは、考えにくい。中国国内で複数の日本人が情報も乏しい中、拘束されたままだ。9月に深圳の日本人学校の男児が殺害された事件も、中国側は容疑者の動機など情報を開示していない。 福島第一原発の処理水放出による、日本産水産物の輸入解禁は見通せない。東シナ海の日本のEEZ(排他的経済水域)内側に、中国は複数のブイを設置しており、当然ながら日本は即時撤去を求めている。中国軍艦船による領海や接続水域への侵入は続いている。 難しい局面は続くが、一歩一歩、前に進めようということなのだろう。実は、日中間で外相が相手の国を訪問するのは、2023年4月に当時の林芳正外相が行なっており、2回連続で日本側が中国へ赴いている。これも、日本が中国に示した誠意なのだろう。 逆に中国外相の来日は4年前の2020年11月を最後に途絶えている。だから、今回の外相会談では、中国共産党の外交部門トップで、党の政治局員という重要ポストにある王毅外相が、来年の早い時期に日本を訪れることができるよう双方で一致した。 中国側には景気の低迷という背景も存在するのだろうが、日中間で、少しいいムードが生まれつつあるようだ。そうして間もなく2025年を迎え、年明け早々に、アメリカでトランプ氏が大統領の座に就く。 トランプ政権が再び発足するのに向け、日本と中国がじわりと関係改善へと動き出した形だ。中国側は自由貿易や、サプライチェーンの維持などに関して、日本と利害関係が一致するとみている。だから、日中間の懸案を巡って態度を軟化させ、日本へ接近している。片や日本も、それを巧みに活用できるはずだ。
2025年は、第二次大戦終結80周年。中国からすると、抗日戦争勝利80周年の節目に当たる。日本以上にネット社会が進んでいるともいえる中国で、反日的な世論が高まる可能性も潜む。不透明な1年が間もなく訪れる。 ■◎飯田和郎(いいだ・かずお) 1960年生まれ。毎日新聞社で記者生活をスタートし佐賀、福岡両県での勤務を経て外信部へ。北京に計2回7年間、台北に3年間、特派員として駐在した。RKB毎日放送移籍後は報道局長、解説委員長などを歴任した。
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