佐世保のバス路線「令和の大再編」へ 北部と南部にハブ拠点…不便な乗り換え、理解得られるか
長崎県佐世保市とその周辺を走る路線バスの運行形態がここ数年で大きく変わる。系統・路線を市全域に張り巡らせて長距離運行してきた仕組みを一新。北部の大野地区と南部の早岐地区に乗り換え拠点をつくり、市民はピストン運行するバスを乗り継ぎながら利用することになる。運転手不足を背景にした減便や路線廃止が続く中“令和の大再編”で市民の足を守ることができるのか-。 ■長距離と重複 佐世保市内の路線バスの特徴は、北部エリアと南部エリアを結ぶために中心部を縦断しながら長距離運行する便が多い点にある。この運行形態は、人口が多い地域に手厚く走らせる狙いがあるとはいえ、どうしても中心部では重複運行が多くなる。通勤・通学時間帯を中心に、バスが中心部の停留所などに連なる光景ができるのはこのためだ。 市や交通事業者の西肥自動車(西肥バス)などは、利便性を極力落とさずにこの長距離・重複運行を減らすにはどうすればいいかを考えた。導き出したのが周辺部から中心部、中心部から周辺部に直接乗り入れる便を減らすという方法。大野と早岐に乗り換え拠点を設け、中・短距離での往復運行に変えようとしている。 ■3分の2に減 この方法の最大の利点は運転手の数を抑えられる点にある。中心部で重複して走る運転手を周辺部の便に適正配置することができるからだ。市地域交通課の藤下一秋主査は「再編は長時間運転といった労働条件の改善にもなる。そうした意味で副次的には運転手の確保策にもつながるはず」と話す。 再編の背景にあるのは深刻な運転手不足。市は、このまま対策を打たなければ5年後の2030年度を迎えた場合、市内を走る運転手は現在の3分の2にまで減少すると予測する。運転手の減少は市民に提供できる走行距離が短くなることに直結する。市は市民への供給上限距離(運転手の人数×1人当たりの実車走行距離)が現在の年間約660万キロから5年後には約480万キロまで落ち込むと試算しており、この点からも路線の一定維持には再編が不可避と考えている。 ■“二兎を追う” ただ再編された場合、市民には乗り換えという大きな負担が待ち受ける。 現在は、例えば市北部の柚木地区からJR佐世保駅前に向かう際は乗り換えずに行くことができる。しかし再編後は、ほとんどのバスが大野でストップ。別のバスに乗り換え、佐世保駅前に向かうことになる。バスが一定持っている定時性や速達性といった役割が損なわれる場面も出てきそうで、通院などを抱える高齢者にとっては不安も付きまとう。再編には利用者にいかに不便さを感じさせないかの工夫が欠かせない。 市は、乗り換え拠点に利用者の待合スペースを設けたり、交通系ICカードに対応した乗り継ぎ割引といった“特典”の導入などを検討。市民の理解を得たい考えだ。 再編は1年間の準備期間の中で事業者との協議などを進め、2026年度から導入する予定。路線を維持しつつ、市民にいかにストレスなく利用してもらえるか。市と交通事業者の“二兎を追う”取り組みが新年度から始まる。