「不透明な2025年」を前に…日中外相会談をウォッチャーが読み解く
武村氏は、若き日の石破茂・現首相と連携していた経緯もある。その石破内閣で岩屋氏が外相という重要閣僚を務める。だから、李強首相は目の前の岩屋外相を、最大級の褒め言葉で迎えたのだろう。すべては、中国との経済関係を重視し、現実路線を歩く石破政権との間で、関係改善をしていこうという演出だ。中国のリーダーは、日本との関係が悪い時は日本の首相と握手しても目を合わせないことすらあった。わかり易いといえば、わかり易い。 ■日中ともビザに関する要望を叶えた 日中外相会談の中身を点検していこう。ワーキングランチを含めて、会談は3時間に及んだという。やはり、国際会議の際に、短時間行われる外相会談とは違い、じっくりと話し合える。岩屋外相は中国人向けの査証(ビザ)発給要件を緩和すると表明した。具体的には、中国人富裕層を念頭に、10年間有効のマルチビザを新たに設ける。また、団体旅行の観光ビザで日本に滞在できる日数を15日間から30日間に倍増する――などの緩和を実施する。 一方、中国政府も先月、日本人向けの短期ビザの免除を再開した。4年8か月ぶりのビザ免除措置の再開だった。このビザ免除再開は、日本側が中国にずっと求めていたもので、中国側が日本からの要請に応えた形だ。一方、中国政府は、中国人の日本訪問ビザについて取得要件を緩和してほしい、と日本側に要望し続けていた。 つまり、ビザに関して、中国はまず日本が望んできたことを実現し、次に日本も中国が望んできたことを叶え、誠意を示した――。そのようなキャッチボールがあった、というわけだ。この1か月の間に、日中双方がそういう成果を生み出したわけだ。日本は中国のお金持ちに、どんどん日本に来てもらって、どんどんお金を使ってもらいたいと目論んでいる。 一方で、このような統計数字もある。今年10~11月、中国国内で実施した世論調査によると、「日本への印象がよくない」と答えた中国人は88%に上った。昨年の調査では「日本への印象がよくない」と答えた中国人は63%だったから、わずか1年で25%も増えたことになる。ただ、このうち「日本を訪れた訪経験のある」中国人は56%が日本によい印象を持ち、逆に訪日経験のない97%がよくない印象を持っていた。