「こんな日が来るなんて」全盲の私には夢だった「1人で散歩」ができた 願いを叶えたアプリの衝撃、その先に見えた課題
例えば、視覚障害者が横断歩道を安心して渡れるように、「ピヨピヨ」「カッコウ」などの音で、青であることを伝える音響式信号機もそうだ。周囲の住民から「うるさい」と苦情が入るなどし、それを受けて深夜帯は音が鳴らないよう設定されている信号が目立ち、困ることが少なくない。文京盲学校での体験会に参加した一人は、こう打ち明けた。 「家の近くの信号が鳴らない時間帯は、勘で渡っている」。文字通り命がけだ。川田さんの自宅近くの信号機も、午後8時から翌日午前8時までは音が出ない。「人が少ない深夜帯や早朝こそ、音が出ないと危ないのに」 アプリを利用する視覚障害者が一番喜んだのは、実はこの点だ。アプリのおかげで音が鳴らない信号でも渡っていいかどうかが判別できるようになった。 ただ、川田さんは複雑な思いを抱いていた。安全性の面から考えれば、本来は音声が流れる方が望ましい。現状では仕方なくアプリを使うしか方法がない状況と言える。
「このままでいいのか、社会全体で考えてほしい。アプリがあればいいというものではない」。川田さんはそう訴えた。