補聴器は高過ぎる!? 動き始めた〝公的助成〟の現在地 全国から注目される「港区モデル」とは?~改善可能な危険因子・難聴⑤
連載第15回から、難聴と認知症の関係について見ている。 補聴器の普及を妨げる大きな理由の一つに、「高額であること」があげられると連載第16回で書いた。また、補聴器普及が進む各国では公的支援(助成)が充実しており、自己負担額が少ないともわかった。 「JapanTrak2022記者発表資料」より各国の公的助成受給内容の比較(資料提供:日本補聴器工業会) そこで今回は、各自治体における補聴器支援の現状を見ながら、今後の課題について考える。 『補聴器にも使い方のトレーニングが必須!注目の「宇都宮方式聴覚リハビリテーション」とは?~改善できる危険因子・難聴(4)』
公的支援はどうなっているか
補聴器は、一つ10万~30万円程度と高額である。また、加齢性難聴では両耳に装用するのが理想であり、その場合、両耳分が必要になる。よって、単純に考えても20万~60万円の費用が必要になるだろう。個人で払うには、大きな額だ。 その点、普及が進んでいる先進諸外国では、補聴器に公的な支援があるために、自己負担額は少ない。 上図は、補聴器に関する大規模調査「EURO Trak2022」と「Japan Trak2022」の結果を表にしたものであるが、ざっくり言うと緑系の色部分が公費を利用して補聴器を買った人の割合で、赤い部分が自己負担で買った人の割合だ。正確に言うと、黄緑で示されているのは補聴器を購入する際に「100%公的助成を受けた人の割合」で、緑は「公的助成を一部受けた人の割合(イギリスのみ自己保険で支払った人の割合が緑表記)」、赤は「公的助成を受けていない人の割合」だ。 色を見れば一目瞭然で、イギリス、デンマーク、ドイツ、フランスなど欧州の補聴器使用者がほぼ公費負担で補聴器を購入しているのに対し、日本で「なんらか公的補助を受けた人」は8%だ。 ちなみにアメリカの場合は、公的助成はないものの、たいていの医療費の支払いは私的な健康保険を利用するのが一般的で、補聴器もその適用になるので、自費で支払う人は少ない。 こうして見ると、補聴器に対する公的助成(支援)の遅れが補聴器の普及を妨げていると、強く感じる。 しかし、実は正にたった今、全国の自治体は少しずつ動き始めている。