【#佐藤優のシン世界地図探索68】ウクライナ終戦三銃士
ウクライナ戦争勃発から世界の構図は激変し、真新しい『シン世界地図』が日々、作り変えられている。この連載ではその世界地図を、作家で元外務省主任分析官、同志社大学客員教授の佐藤優氏が、オシント(OSINT Open Source INTelligence:オープンソースインテリジェンス、公開されている情報)を駆使して探索していく! * * * 7月13日、米国東部のペンシルバニア州バトラーで、ドナルド・トランプ前米大統領が暗殺犯に狙撃され右耳に被弾。右耳から血を流しながらも、拳を上げて「戦え」と連呼。惨劇の場を"トランプ劇場"に激変させた。 そして15日には、ウィスコンシン州ミルウォーキーで行なわれた共和党全国大会にて、トランプ氏が党の大統領候補に正式決定。同時にトランプ氏は副大統領候補にJ.D・バンス上院議員を指名した。 バンス副大統領候補は、貧しい白人労働者階級の悲哀を描いたベストセラー自伝『ヒルビリー・エレジー』を書いた作家。トランプは度々、ウクライナ戦争の終戦に意欲を示しているが、バンス副大統領候補も「ロシアの侵攻は支持しないが、ウクライナが勝利すると信じることはできない」と発言している。 そして、その党大会の最前列にはこのふたりの横に、マイク・ジョンソン米国下院議長が並んだ。ウクライナ向けの支援に最後の最後まで反対し、ウクライナ軍の砲弾不足を招いた人物だ。 まさに"ウクライナ戦争・終戦三銃士"である。この人選とこの先の展望について佐藤優氏に聞いた。 佐藤 副大統領候補にバンスとはうまい人選ですね。 ――そうなんですか? 白人労働者階級出身で相当貧しかったということになってますが......。 佐藤 しかも、本人はカトリック教徒でありながら奥さんはインド系でヒンズー教の家庭で育ったそうです。つまり、宗教で国を分断しないという大義名分も立ちます。 ――トランプは佐藤さんと同じ、プロテスタント・カルバン派ですからね。 佐藤 本当にフェイントですよね。誰もが副大統領候補は、トランプと候補者の指名争いをしていたニッキー・ヘイリーだと思っていたわけじゃないですか。 ――確かに。 佐藤 それをパーンと蹴ったわけです。新聞報道では、連絡が来たのは共和党大会の20分前だったらしいです。 でもこれはいい人事ですよ。39歳と若く、いきなりトランプの後継者ができたわけです。さらにラストベルト(鉄鋼や石炭、自動車などの主要産業が衰退した米国の工業地帯)出身の白人の代表的な存在ですから。