俳優・三浦浩一、3人息子の自慢だった『魔女の宅急便』出演。つかみ取ったキキの父役に「うちのパパすごい!」
舞台の稽古でダメ出しをされ…
2010年、平幹二朗さんの「幹の会」の舞台『冬のライオン』(演出:高瀬久男)に出演。平さんとはお正月の時代劇と舞台『剣客商売』で共演経験があったという。 「『冬のライオン』はギリシャ悲劇で、演出が亡くなった文学座の高瀬久男さんだったんですけど、稽古場で、これでもかっていうぐらいダメ出しの嵐で…。 他の方はそんなにダメ出しされてないんだけど、僕はことごとく、手の上げ下げから、からだの右左…とにかくダメ出しの毎日で、本当にもう稽古場に行くのが嫌になっちゃって(笑)。 家に帰ってカミさんに『もう俺ダメだ。耐えられない。この作品を降りようかと思う』って言ったんですよ。そうしたらカミさんに『あなたね、今そんなふうに厳しいことを言ってくれる人なんていないんじゃないの?ありがたいと思ってやりなさいよ』って言われて。 そのときは『ふざけるな、俺がこれだけやって苦しんでいるのに』って思ったんですけど、何とか頑張って稽古に行って幕が開いてね。そのときにお客さんの僕のお芝居に対しての評価がすごく良くて。 それでわかったんですよね。キッド(東京キッドブラザース)で身についた余計なものを高瀬さんが全部取っ払ってくれたんだって。キッドは全部客掛け、お客さんにセリフを掛けるんですよ。役者同士でしゃべっている人も、どこかでからだがお客さんを向いているとかね。そういうやり方が染みついていたんでしょうね。だから本当に高瀬さんにも感謝です。僕は本当にそういう人たちに恵まれましたよね」 ――平さんとは『冬のライオン』のあともご一緒されていますね。 「はい。『冬のライオン』のロングランをやって、その後、『王女メディア』を2回やっています。そのときも、本当に舞台の上で平さんが演じている姿を少しでも脳裏に焼きつけるように見ていました。やっぱりそのくらいすばらしかったですね」 ――舞台の合間などにはどのようなお話をされていたのですか。 「そう言われると、何でもっと話をしなかったのかなって悔やまれますけど。みんな(酒を)飲む人ばかりだったんですよ。だから平さんが号令をかけて、みんなでイタリアンかフレンチによく行きましたね。 平さんはワインなんですよ。ワインのボトルがどれだけ並んだのかというぐらい空いていましたね。みんな飲む人ばかりでいろんな話をしました。演技の真面目な話をするときもあるし、くだらない話も多かったですね(笑)。 あと、きれいな木とか花が咲いているようなところがあって。私有地なんだけど、開放していて見せてくれるような山があったので、そこにみんなで散歩に行ったりしてね。 そのときに、山の中にくつろげる小屋があって、そこで平さんが朝、ご自分で野菜にバルサミコ酢とかをかけたサラダとちょっとしたものを振る舞ってくれたんですけど、そのサラダがすごくおいしくて。そういうのは本当にうれしかったですね」 ――昔はみなさん、撮影の合間や終演後に飲みに行かれたりしていましたけど、コロナでめっきり減りましたね。 「そうです。コロナで完全にそういうのがなくなって。それに今の若い子たちは、役者さんもスタッフさんも自分の時間が大事みたいで、先輩たちとああだこうだしゃべるのは苦手みたいですね。サラリーマンの人とかでもそういう話を聞くじゃないですか。だけど、そういうくだらない話から得るものって結構多いと思うんですよ、だから寂しいなっていう気はするんです。 何かそういうのが楽しかった。先輩たちの本当に結構くだらない話を聞いたりするのがね。2時間ドラマのロケで旅館を借りて撮影すると、大広間でスタッフと役者みんなでご飯を食べて、ちょっと飲んで。食事が終わって片付けが始まっても、飲みたいやつは部屋の端っこのほうに集まって監督や役者のバカ話を聞いてゲラゲラ笑って(笑)。 お芝居にしても映画にしても、作品を良くしようと思って意見を戦わせて、時にそれが行きすぎちゃってケンカなんてことも昔は山ほどあったんですけど、今それはなかなか難しい。 でも、作品を作るということは、意見を交換する、ぶつかり合う…そういうので練って練ってできていく、そういう世界だと思うんです。 遠慮し合って、言いたいことも言わないでって、何か形には一応なるんですけど、熱がないというか、深みを感じないというか…。難しいですよね。僕は本当に良い時代にすばらしい先輩たちとご一緒できて良かったなあって思います」 今年は初めてシェイクスピア作品に挑戦し、2024年8月29日(木)~9月2日(月)まで『リア王2024』(演出:横内正)に出演。次回はその舞台裏、海外の映画祭への思い、11月1日(金)に公開される映画『ぴっぱらん!!』についても紹介。(津島令子) ※宮崎駿の「崎」は立つ崎(たつさき)が正式表記