俳優・三浦浩一、3人息子の自慢だった『魔女の宅急便』出演。つかみ取ったキキの父役に「うちのパパすごい!」
『鬼平犯科帳』でハマり役
1989年、三浦さんは、中村吉右衛門さん主演時代劇『鬼平犯科帳』に出演。密偵・伊三次役を演じた。 ――初主演ドラマが『風神の門』(NHK)でしたし、時代劇作品も多いですね。 「そうですね。『鬼平犯科帳』とか『剣客商売』など池波正太郎さんの作品もありますしね。伊三次は、男から見てもカッコいい、いなせな男で、そういう役をいただけて本当にうれしかったです。そういうプロデューサー、監督にも恵まれたし、共演者にも恵まれましたね。 僕にとってこれがあるから今があるという役柄にも恵まれて。『風神の門』の霧隠才蔵も『鬼平犯科帳』の伊三次も『剣客商売』の弥七も、僕の役者としての代表的な役柄ですね」 ――シリーズとして長く続くということは、最初から知らされていたのですか。 「いいえ、どのくらい続くかはわかってなかったんですけど、『五月闇(さつきやみ)』で伊三次が死ぬということは知っていたんですよ」 ――第6シリーズの第11話でしたね。 「そうです。雨の中で刺されて殺されちゃう。『五月闇』で伊三次が死ぬのは知っていたから当時のプロデューサーに、『「五月闇」を映像化するのは、鬼平犯科帳がもう最後だというとき、最終回にしてほしい』って、勝手なお願いをしていたんですよ。 それで、『五月闇』の台本が来たから、『ああ、「鬼平シリーズ」は終わるんだ』って思ってやって放送も終わりました。そうしたら、次の年にまた新シリーズがあるって聞いて、『終わりじゃなかったの?まだ続くのかよ』ってがっくり来たんですよ。もう出られないと思うと悔しくてね。 それでいくつか僕のいない回があった後、(2002年に亡くなった)市川(久夫)さんというプロデューサーに『伊三次を出したい』って言われて。 僕もあの役は大好きで自分の役だと思っているけど『ちょっと待って。お客さんはもう伊三次は死んでいると思っているわけだし、それでまた出てきたらおかしい。お客さんを裏切ることになるから本当に出たいけどごめんなさい』って最初は断ったんです。 そうしたら、『わかった。じゃあ、「これはまだ伊三次が生きていたときの話である」と、ナレーションで一行足すから、それでどうだ?』って言われて。 『そこまで考えてくださるんだったら、ぜひ出演させてください』ってお願いしました。だから伊三次が生きていた頃の話ということで、それから延々とずっと最後まで出させてもらいました。途中抜けていますけど、平成元年から平成28年まで続いているんですよね」 ――三浦さんと言えば『鬼平犯科帳』が浮かびますものね。 「そうですよね。あれだけ長く続いていたらそうだと思いますし、あと、時代劇専門チャンネルとかBSなどで、延々とやっているんですよ、『鬼平犯科帳』と『剣客商売』が。だから、池波正太郎さんのおかげですよね」 ――あの世界で画になっていますよね。『剣客商売』も正義感が強い弥七さん役で。 「一応自分のなかでは、伊三次と『剣客商売』の弥七は切り替えてやっているつもりなんです。でも、カツラは同じ感じですね。 『鬼平犯科帳』では中村吉右衛門さん、『剣客商売』では藤田まことさんに本当にお世話になりましたね。そういうすばらしい俳優さん、女優さんといっぱいお仕事をさせてもらって、いいところをいっぱい吸収させてもらって…本当にそういう感じですね」 ――どちらも京都での撮影でしたね。 「そうです。どちらも京都の松竹撮影所です。あの頃は、1年のうち半分は京都でした。それで現代劇のレギュラーも並行してあったときがあるから、京都で時代劇を撮って、東京で現代劇を撮る、そういう時期があって、結構すごいスケジュールでしたね。 それで、そういうものが永遠に続くと思っちゃうんですよね、馬鹿だから(笑)。僕は健康だったら、こうやってずっと仕事も続くし、お金も入ってくるだろうみたいな甘い考えだったんだけど、やっぱり見事にそうじゃなくなってきてね。 その頃、僕は生意気にも2時間ドラマなどは断っていたんですよ。要するにレギュラーもあるし、2時間ドラマはやらなくてもいいよって。 ところが、レギュラーなんていつまでも続くものじゃないから、その後、2時間ドラマをいっぱいやることになって。犯人役も相当やっていて、本当かどうかわからないけど、『犯人役で殺した数でいうと5本の指に入っている』っていわれるほど犯人役をやっているんですよ(笑)。刑事役も山ほどやっていますね」