《ブラジル》特別寄稿= サンパウロに「日本ビル」を建設するという夢物語の実現に向けて
ブラジルのサンパウロの中心部に「イタリア・ビル」(Edificio Italia)という地上168m、46階建ての巨大なビルがある。イタリア移民のコロニアのイニシアテイブで建設され1965年に完成したシンボル的タワーである。設計者はブラジルの建築家のFranz Heepである。屋上には展望台があり、有名なテラソ・イタリアというレストランもある人気スポットである。 何といってもイタリアはブラジルへ最大多数の移民を送り出した国であるので納得できよう。その他にもユダヤ人コミュニティが建設した「エブライカ・サンパウロ」やアラブ系の「シリア・レバノン会館」等も存在する。ブラジルは、世界最大の日系人が住んでいる国であるし、日本はブラジル経済や産業の発展に貢献した国でもあるので、「日本ビル」の建設もそれほど荒唐無稽な話ではない。 振り返ってみると2004年9月に、ブラジル日本移民百周年記念祭典協会会長の上原幸敬氏(当時文協会長)の名前で小泉純一郎首相あてに、「日伯総合センター」建設計画の要請状が提出されている。ブラジルの日系社会の未来をいかなるものにするかという観点から「日伯総合センター」のプロジェクトを立ち上げたと記されている。
それによると、総面積9万3600平米の大きさで、総工費は6千万ドル(1ドル150円とすると90億円)。施設の中には図書館、カラオケ、ゲーム室等も入っている。要請状のトーンをみてみると「日本人全体を視野に入れた重要プロジェクトという大きな目標に向かってみんなが団結すれば、資金調達できる可能性は大いにあります」と書かれているが、日本政府頼みが濃厚である。結局実現には至らなかった。 ブラジル日報の深沢正雪編集長も2023年12月19日付けの記者コラムに「次の4年間は日系社会の正念場か」というタイトルで「日伯総合センター」の建設を再度検討するべきだと主張されている。このような大きなプロジェクトの実現は、決してあきらめることなく繰り返しチャレンジする必要がある。 この原稿は、ブラスキ(ブラキチではなくブラジル好き人間)の夢物語として受け取ってもらいたい。どうすれば、サンパウロに「日本ビル」(Edificio Nippon, Edificio Japão)を建設することができるかを勝手に考えたものである。筆者は、2003年11月から2006年3月まで、ジェトロのサンパウロ事務所所長を務めたが、この原稿の内容は全く個人の意見である。