フランス「極右首相」は生まれるのか、危機感に賭けたマクロン大統領の勝算とリスク
比例代表制で行われたフランス選出の欧州議会選挙と異なり、国民議会選挙は577の小選挙区ごとに2回投票制で行われる。初回投票で50%以上の票を獲得し、有権者の4分の1以上の票を獲得すれば、その候補が議席を獲得する。 初回投票での当選者がいない場合、初回投票の上位2名と有権者の12.5%以上の票を獲得した候補が決選投票に進み、決選投票での最多票獲得者が議席を獲得する。 過去の国民議会選挙では、初回投票で敗退した候補の支持者が極右政党の候補に投票せず、大統領会派に有利に働くことが多かった。今回も極右勢力の台頭に対する「危機バネ」が働くことにマクロン大統領は期待しているのだろう。
今回のフランスの欧州議会選挙で大統領支持会派の選挙戦を率いたのは、全国的な知名度が低い欧州議会議員のハイヤー氏だった。国民議会選挙では、フィリップ元首相、アッタル現首相、ルメール財務相、ダルマナン内相など、人気と知名度を兼ね備えた政界の重鎮がこぞって選挙戦を展開する。 選挙制度を考えると、大統領支持会派が決選投票に進んで勝利するには、極右勢力だけでなく、左派勢力の動向も鍵を握る。 2022年の国民議会選挙では、社会党、不服従のフランス、欧州・エコロジー=緑の党、共産党などが統一会派・新人民連合環境社会(NUPES)を結成し、最大野党となった。社会党はその後の議会運営で左派統一会派NUPESに参加せず、今回の欧州議会選挙で他の左派政党を上回る支持を獲得し、党勢回復に成功した。
欧州議会選挙で別々に戦った左派政党が、国民議会選挙で再び統一会派を結成できるかはわからない。その場合、野党票が分断し、大統領支持会派に有利に働く可能性がある。 ただ、欧州議会選挙での大敗直後に行われる今回の国民議会選挙で、大統領支持会派の苦戦は避けられない。国民連合の支持者は引退した高齢者や過激思想の持ち主だけでなく、若者や一般市民に広がっており、かつてのような「危機バネ」が働くとは限らない。 極右政党が第一党となれば、極右首相が誕生する可能性が高い。