フランス「極右首相」は生まれるのか、危機感に賭けたマクロン大統領の勝算とリスク
マクロン陣営は今回の欧州議会選挙を「欧州の未来を占う選挙」と位置づけたが、野党勢は「マクロン大統領への審判の場」と位置づけ、争点化することに成功した。 ■「追い込まれるより今」と総選挙に踏み切った 2022年の大統領選挙で再選を果たしたマクロン大統領は、直後に行われた国民議会選挙で大統領支持会派が過半数を失って以来、厳しい議会運営を強いられてきた。 野党勢の協力が得られない法案審議では、議会採決を迂回する憲法上の特例を用いて、法案を通す事態が頻発している。この特例は内閣不信任決議を兼ねている。これまでは野党勢が一枚岩でなかったことで不信任を免れてきたが、穏健野党も政権への不信感を強めており、秋の議会審議では内閣不信任のリスクが高まっていた。
マクロン大統領としては、内閣不信任に追い込まれての解散・総選挙よりも、国民の間で極右台頭への危機感が高まっているタイミングで、自らのイニシアティブで総選挙を行うほうが得策との判断が働いたのだろう。 マクロン大統領に勝算はあるのだろうか。 今回の欧州議会選で、マクロン大統領の支持会派・再生(ルネッサンス)の得票率は14.6%にとどまり、極右政党・国民連合の31.4%にダブルスコアで大敗した。 極右政党・国民連合が最近、党勢を拡大する原動力となっているのが28歳のバルデラ党首だ。ユーロ離脱など極端な主張を封印することで、党のイメージを刷新することに成功している。
マクロン大統領としては、極右台頭への危機感、選挙制度、選挙日程、選挙の顔、野党の分断を味方につけようとしている。 ■危機感を呼び起こし、重鎮を総動員 国民議会選挙は議会の解散から20~40日以内に行われる。マクロン大統領は初回投票日をその中の最短日程である6月30日に設定し、1週間後の7月7日に決選投票が行われる。 7月26日に開幕するパリ五輪を考慮した日程との見方もあるが、欧州議会選挙直後の投票により、極右台頭への危機感を呼び起こし、欧州議会選挙に参加しなかった有権者が投票所に足を運ぶことに期待している可能性がある。