役職定年まであと2年弱…銀行のシステムセンター所長を務める58歳男性が「保育士」の資格をとった驚きの理由
「電気工事士」と「保育士」…現職とは無関係の2資格を取得したワケ
――ただ、積極的に社外に目を向けた実践はされているようですね。また、資格も複数持っていらっしゃいます。 じぃ:もともとは持っていなかったんですけど、銀行の部署異動先によっては、特化した資格を取らされることがありました。 正直「仕方がないから勉強して取った」みたいな感じでしたが、そこで気づいたこともありました。「どうせなら、定年後の自分に役立ちそうな資格を取ったほうが良いだろう」ということです。それで、現在の職とは全く関係のない電気工事士や保育士の資格を取得したりしました。 電気工事士も保育士も、「役に立った」実感を持てる ――電気工事士と保育士自体はかけ離れた資格のようにも思えますが、この2つを取得した理由は何だったのですか? じぃ:電気工事士資格を取った理由は、高校時代にアルバイトでやっていた電気工事が楽しかったので、もう1度やってみたいと思ったからです。 そして、保育士は直接的に子どもや親御さんからのレスポンスがあり、「役に立った」という実感を持てそうだからです。「『役に立った』実感を持てる」という点で言えば、私の中では電気工事士も保育士もそれほどかけ離れたイメージはないんですね。 ――どういうことですか? じぃ:電気工事の場合、工事作業を終えた後に何かが使えるようになります。その際に「役に立った」という実感を持てるという点では、今言った保育士の仕事と同じなんです。 今までに銀行でやってきたシステム開発の仕事は、とにかく「取り組んだプロジェクトを終わらせること」だけに注力し、「状況を上司に説明する」「経営陣に説明する」といったことが中心で、肝心の「社会にどう役に立っているのか」という実感がわかないんです。
サラリーマンは「役に立った」という実感を得にくい
――当然、銀行でやられていたシステム開発も社会貢献度は高いと思いますが、個人的な「レスポンスがない」ということですか? じぃ:そうです。サラリーマンは皆そうだと思いますが、何かの仕事に取り組み完結させたとしても、フィードバックと言えばせいぜい「ボーナスが増えた」くらいです。実際に「ありがとう!」「役に立ちました!」といった声を聞くわけではありません。 またシステム開発は、例えば建築のように「橋を作った」といったように目に見えるカタチで残るものではなく、仮に革新的なシステムを開発してもなかなかクローズアップされないものなんです。 一方、失敗すると途端に叩かれるのもシステム開発であったりするのです。ですから、こういった仕事は定年までにして、定年後は会社に縛られることなく「実感を持てる仕事」に就きたいなと思っています。 余談ですが、保育士の資格を取るための実習で保育園に行ったんですよ。最初「おじさんが来たら、保育園の子どもたちは警戒するんじゃないかな……」と思ったのですが、子どもたちは「初めて見る人」を珍しく思うみたいで、皆が私のところに集まって来てくれる。 私の手をつないで離さない女の子までいて、「こんなにモテたの人生で初めてなんだけど」と思いました(笑)。こんな風に、定年後は実感を得られるような仕事に就けたら良いなとおぼろげながらに思っています。
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