全日本2連覇、青学大野球部の安藤寧則監督が語るチーム作りの信念「徹底の裏側には納得がある」
【「納得」があるから「徹底」できる】 安藤監督が選手たちとともに目指すのは、必死なプレーで見ている者を惹きつける「応援されるチーム」だ。ドラフト上位指名候補の西川史礁(にしかわ・ みしょう/4年)はこう語る。 「打ったあとに1塁まで駆け抜けたり、フライを打ち上げた場合も全力で走ったり、"最後まで やりきる"こと。それらは野球のすべてに繋がっていると思いますし、そういったところから結果に結びついていく。普段から全力で取り組む姿勢を意識しながら、思いきってプレーすることを心がけています」 こんな言葉からも目指す野球が浸透している印象を受けたが、安藤監督は「"徹底"の裏側には"納得"がある」と選手たちに言い聞かせてきたという。 「今年は佐々木キャプテンを中心にチーム作りをしていくわけですが、チームにはさまざまなところで頑張ってきた選手たちがいて、それぞれの事情を抱えている。頭で理解していても、心から納得できていないところがあると、それをやり続けることはなかなか難しい。さまざまなことを乗り越えて、納得してやり続ける苦労はそれぞれにあったと思います」。 新チームの始動時にはA4用紙に書いた目標を共有し、4冠を目指して歩み始めたものの、シーズン開幕を前にした社会人チームとの練習試合で3連敗を喫した。佐々木は「『なぜこんなに負けるのか。このままだとヤバいかもしれない』と思いました」と、当時を振り返る。そんな状況でミーティングを実施し、課題を洗い出したことが、春季リーグの開幕8連勝に繋がったという。 「(春季リーグ決勝の)負ければリーグ優勝を逃すという、大きな壁を乗り越えた経験が生かされている」(西川)というチームは、全日本大学選手権でも安定した戦いで並いる強豪を退け、決勝では早稲田大を相手に逆転勝利を収めた。 そして、安藤監督が「口数はあまり多くないですが、本当に我慢強くて、チームを背中で引っ張ってくれる」と評価するキャプテンの佐々木は、リーグ戦の不振を脱して最高殊勲選手賞を獲得。さまざまな試練を乗り越えた選手たちの成長が連覇を引き寄せた。 厳しい戦いを経験し、課題と向き合いながら逞しく成長してきたチームは、昨年に達成できなかった史上5校目の大学野球4冠達成に向けて、歩みを進めていく。 「母校を絶対に日本一にする」 5年前に揺るぎない覚悟を持って監督に就任した指揮官と、自慢の後輩たちに実りの秋は訪れるのか。その行方を見守りたい。
白鳥純一●取材・文 text by Shiratori Junichi