社説:国の来年度予算案 持続可能な歳出規模なのか
使う金を膨らませる一方、国民の安心や将来が見えないのは、どうしたことか。 政府が決定した2025年度当初予算案は、一般会計の歳出総額を115兆円の過去最大とした。 新型コロナウイルス対策で膨れあがった予算を「平時に戻す」としていたが、指針などなかったかのようだ。身の丈に合った持続可能な規模とは言い難い。 急速な高齢化で社会保障費がかさむ上、政治の思惑が積み重なった歳出増がのしかかる。 物価高に伴う消費税の実入り増などを受け、税収は6年連続で過去最高を更新したが、肥大化する歳出がはるかに上回り、借金依存の体質は続く。 際立つのは、初めて8兆円台に乗せた防衛費増だ。 5年間で総額43兆円を投じる防衛力強化の3年目。反撃能力(敵基地攻撃能力)に活用する長射程ミサイル開発、自衛官の処遇改善などを盛り込んだ。 数字ありきでの防衛費「倍増」は、中身の根拠も十分示されていない。23年度は、1300億円もの予算が使い残された。必要性の精査が不可欠だ。 財源は法人税、たばこ税の増税を26年度から始める一方で、所得税増税は開始時期を先送りした。見切り発車の無責任さが目に余る。 社会保障費は38兆円で、過去最大を更新した。高齢化による伸びを、「薬価」引き下げと、医療費の支払いを一定に抑える「高額療養費制度」の見直しで一部圧縮はした形である。 看板とする地方創生や防災、闇バイトなど犯罪対策の積み増しに加え、学校教員に残業代の代わりに支給する「教職調整額」の引き上げ、子育て支援として育休給付や児童手当の拡充なども盛り込んだ。 前政権は異次元少子化対策の財源捻出として「歳出改革」を掲げていたが、増加の歯止めはかかっていない。保険料に上乗せする「支援金」など将来の負担増につながらないか。 新たに28兆円の国債を発行する。当初予算では17年ぶりに30兆円を下回ったものの、大型補正予算で国債を増発する「抜け穴」が常態化している。 借金返済と利払い費を合わせて28兆円とした。24年度末の国債残高は1105兆円に上り、金利上昇局面で利払いはさらに重くなることも見込まれる。 先進国最悪の赤字財政を放置し続ければ、国際的な信認が揺らぎかねない。 きのう、石破茂首相は「財政健全化の旗を降ろすことはない」と述べた。ならば具体的な道筋を示してほしい。 伯仲国会での予算成立には、野党の協力が要る。予算委員長のポストを握る立憲民主党をはじめ、野党は責任の重さを自覚してもらいたい。目先の人気取りでなく、予算のひずみを正す議論を尽くさねばならない。