「この番組が終わる時は戦争が起こる時だ」 西田敏行さんが語っていた「ナイトスクープ」に対する思い
台本にない「宴会芸」のシーン
映画「釣りバカ日誌」シリーズの11~13の監督で日本映画監督協会理事長の本木克英氏はこう語る。 「西田さんは台本通りにやらないというイメージが広まっているかもしれませんが、時代劇などでは、正確に台本を表現する方です。長ゼリフを一字一句間違わずに言いながら、いろんなパターンの芝居を見せてくれる、ある意味で天才的な俳優でした」 ただし、「釣りバカ」シリーズではアドリブを連発。本木氏が監督を務めた「13」には、西田さん演じるハマちゃんがイカの格好をして宴会芸をやるシーンがあるが、それも山田洋次氏らの脚本にはない西田さんのアイデアだった。 「ロケ地が富山で名産がホタルイカということで、西田さんがフラメンコをアレンジした“ホタルイカメンコ”でいこうと言って、私や助監督などスタッフと一緒に作りました」(同) 元々はたった2行のセリフだけのシーンが、アドリブで2ページ分にまで広がったこともあった。
たった2行のセリフだけのシーンが、2ページ分に
同じ「13」でトロッコ電車に乗って黒部峡谷を見に行くシーン。たまたま乗り合わせた釣り人のおじさんに、ハマちゃんが“この辺は何が釣れんの?”と聞くと、おじさんが“イワナ”と言いながらイワナを見せる。それだけの場面だったが、撮影の前の晩、 「私と西田さんと、乗り合わせるおじさん役の俳優・梅津榮さんでお酒を飲みながら話している時、この地域は佐伯という名前が多いから、そのおじさんは釣りの“佐伯名人”という設定にしましょうと私がアイデアを出しました」(本木氏) そして臨んだ翌日の撮影。電車内のシーンのため、一発勝負で撮るしかない。 「そこで、西田さんは佐伯名人が出した本を読みましたとか、その本のタイトルが『イワナは何も言わない』だとか、サインくださいとか、アドリブを出してきた。佐伯名人の梅津さんも変な短詩を作り出して応酬して……。台本からさらに踏み込んだ設定を元に、西田さんたちは即興芝居をやって、それを書き起こすと2ページ分くらいになっていた。もう驚愕(きょうがく)するばかりでしたね」(同)