「母親は常に機嫌よくいるべき」はむしろ子どもに悪影響…小児科医が指摘する、真面目な人ほど見落としている一番大切なこと
笑顔の習慣で、脳にいい「幸せホルモン」を出そう
このように、親御さんがいつも能面のように貼りついた笑顔でいる必要はないのですが、それでもなるべく笑顔を心がけることには、いい面がたくさんあります。 アメリカ人は、幼い頃から常に「笑顔のトレーニング」をしています。電車やエレベーターなどで知らない人と居合わせたときには、すぐに笑顔を見せます。それが、多様な人種が同じ国で共存するなかで、言葉や文化を超えてお互いが信頼し合える、もっとも基本的で原始的なコミュニケーションの手段だからです。 周りの大人が常に笑顔でポジティブに働きかけることで、子どもの脳でもミラーニューロンが作用し、前頭葉がポジティブに反応しやすくなります。 そこで親御さんはぜひ、毎日鏡の前でじっと自分を見つめ、笑いかけてみてください。自分では笑っているつもりでも、意外にもそれが相手には「笑顔」と映っていない可能性もあります。人間の顔には、さまざまな表情筋が存在しています。これらの筋肉の動きを意識することで、子どもにもポジティブさが伝わる笑顔を練習しましょう。 また、幸せホルモンのセロトニンを分泌するセロトニン神経は、ものを噛むときに用いる咀嚼筋群をコントロールしています。 ストレスが蓄積されると、この咀嚼筋群がこわばり、顎関節の動きが悪くなるため、口を開けるときに音がしたり、激しい痛みを感じたりするようになります。これが「顎関節症」と呼ばれる疾患です。思うように食事がとれなくなることで、ますます心身の不調が悪化してしまいます。 一日数分でよいので、顎の周りから表情筋全体をしっかりとほぐすマッサージの習慣を取り入れましょう。セロトニン神経が安定して幸福感が高まることで、ますます家庭に笑顔が増えることにつながるはずです。 【無理に機嫌よくいるよりも、健康で安定した気分でいることが大事。また表情筋を鍛えることでセロトニン神経が活性化され、家庭がポジティブな雰囲気に】
〈著者プロフィール〉成田奈緒子
小児科医・医学博士。公認心理師。子育て科学アクシス代表。 1987年神戸大学卒業後、米国セントルイスワシントン大学医学部や筑波大学基礎医学系で分子生物学・発生学・解剖学・脳科学の研究を行う。2009年より文教大学教育学部教授。臨床医、研究者としての活動も続けながら、医療、心理、教育、福祉を融合した新しい子育て理論を展開している。『その「一言」が子どもの脳をダメにする』(SBクリエイティブ)、『「発達障害」と間違われる子どもたち』(青春出版社)、『高学歴親という病』(講談社)など著書多数