地球の新しい地質年代「人新世」の新設案を否決 その理由と背景は
■人新世を地質年代とするかどうかの議論は15年前から
国際地質科学連合は2009年に、現代が含まれる地質年代を管轄する第四紀層序小委員会の下部組織として人新世作業部会を設置し、人新世を新たな地質年代とするかどうかの本格的な議論を開始しました。2019年には、人新世を正式な地質年代として取り扱うこと、その時代区分が20世紀後半であることが賛成多数で可決されました。 人新世を地質年代として扱う場合、それは地層に埋没した証拠を元に決定されるため、世界のどこかの地層を基準として定める必要があります(※4)。日本の別府湾を含めた12の地層が候補として上がりましたが、2023年7月にカナダ東部のトロント近郊にあるクロフォード湖の湖底堆積物が選ばれました。クロフォード湖の湖底堆積物を分析すると、化石燃料の高温燃焼で生じるフライアッシュや、核爆発によって生成・放出されるプルトニウムが1950年代を境に急激に増えていることが分かります。また、1950年代は気候変動が急激に進行した時期と一致しています。そして、比較的最近の時代を特定するのに使用される放射性炭素年代測定は、核爆発の影響が現れていないと見なされている1950年を0年としています。 ※4…日本国内で著名な例としては、千葉県市原市の養老川沿いにある千葉セクションという地層で定義されたチバニアン期があります。しかし、一部の地質時代は、基準となる地層がまだ決まっていないものがあります。また、非常に古い地質時代は地質学的証拠が乏しいため、単に何年前という時間で決定されているものもあります。 このため、人新世作業部会はクロフォード湖の湖底堆積物を基準に、1952年以降を人新世とする案を決定し、それ以降の議論にかけることとしました。この案に基づけば、完新世メガラヤン期は1951年に終了し、現在は人新世となります。また、人新世は世であるため、一番下の時代区分である期は命名規則に基づくとクロフォーディアン期(Crawfordian)と命名される可能性があります。