地球の新しい地質年代「人新世」の新設案を否決 その理由と背景は
地球環境の著しい変化の原因は様々であり、「生物の出現や進化」「火山噴火や隕石衝突」「地球の自転や公転の性質の変化」と言ったものが挙げられますが、生物の1種である私たち人類の影響も、原因として考慮されるべきでしょう。 現在の私たちの活動は、目に見える形で地球の環境を改変しています。農業や都市開発における大量の土壌の運搬や掘り出しは、地形を永久に改変しています。化石燃料の燃焼などは温室効果ガスを大量に放出し、大気組成を変えただけでなく、気候変動や海洋酸性化を招いています。都市開発や農業・養殖は、本来生息していない場所で生物を増やしたり、または在来の生物を絶滅させてきました。そして大量の製品や廃棄物は、プラスチックなど天然に存在しない “鉱物” や “岩石” を半永久的に地層に埋没させています。 このため、人類の活動による影響が地球環境に現れた時代を、それ以前のメガラヤンとは区別し、新しい世である「人新世」を設けるべきではないか、とする議論が2000年から持ち上がりました。この議論は、オゾンホールの研究で知られるパウル・クルッツェン氏が国際会議で “Anthropocene”(※2)という言葉を使ったことが始まりであると一般的にみなされています(※3)。 ※2…人新世の英語名は、いずれもギリシャ語で「人」を意味するἄνθρωποςと、「新しい」を意味するκαινόςを繋げたものです。日本語では世の地質区分は全て「-新世」と訳されています。 ※3…ただし、Anthropoceneという言葉を最初に使ったのはユージン・ストーマー氏で、時期は1980年代であると言われています。クルッツェン氏は、2000年の発言時にはそれを知らなかったと述べています。国際層序委員会は、Anthropoceneという言葉を作った人物としてストーマー氏とクルッツェン氏の両名を挙げており、提唱時期を2000年としています。