地球の新しい地質年代「人新世」の新設案を否決 その理由と背景は
人類の活動は確実に地球環境を変えてきました。これを踏まえ、新しい地質年代として「人新世」を創設することが提唱され、2009年から国際地質科学連合の作業部会で議論が行われてきました。正式に地質年代として登録されるには、全部で3段階の議論が必要です。 今日の宇宙画像 国際地質科学連合の下部組織である第四紀層序小委員会にて2024年2月1日から6週間かけて審議と投票が行われた結果、人新世の創設は過半数の反対票で否決されました。ただし、この決定は人類が地球環境を変えたことを否定するものではなく、むしろ人新世という地質年代の重要性を鑑み、人類による環境改変を過小評価しないための否決であると言えます。
■新しい地質年代「人新世」とは
私たちは今のところタイムマシンを持っていませんが、地層に埋まっている “タイムカプセル” である鉱物や化石を分析することで、過去の地球環境を知ることができます。これらの手掛かりを元に分析すると、地球環境は今よりも暑い時代や寒い時代、生物がゼロだった時代から豊富な時代まで、非常に変化に富んでいたことが分かります。 変化し続けてきた過去の地球の時代を区分するには「地質年代」と呼ばれる地学用語を用います。地質年代は、ある程度一定の環境が維持されていた期間を1つの時代とし、環境が著しく変化した時点を区切りとする概念です。環境の維持や変化は、地層に見られる化石の種類の変化で知ることができるため、言い換えれば地質年代は生物の繁栄や絶滅を間接的に表しています。地質年代は、大きな時代区分から順に「累代」「代」「紀」「世」「期」と細分化されており、正式な時代区分は国際地質科学連合の下部組織である国際層序委員会が決定します。今現在を地質年代で言うなら、上から順に顕生代、新生代、第四紀、完新世、メガラヤン期となります。メガラヤン期は紀元前2200年から始まっています (※1) 。 ※1…地層年代で何年前かを表す基準となる年は西暦2000年です。メガラヤン期はこの年から4200年前に始まったため、開始年代は紀元前2200年となります。