「母親らしくない」たたかれてもいい 嫌われることを恐れない、50歳を迎えた千秋の夢
「離婚してもいいことだらけ」私はたたかれ役でいい
肩の力を抜いて無理をしない生き方は、仕事以外でも変わらない。娘を持つ母親として、育児に関しても飾らずにありのままの気持ちを発信し続けてきた。 「なんで子供が生まれた途端に、お母さんは聖母マリア様みたいに『子供が大好きです、料理も大好きです』ってならないといけないのかな、と思っていて。自分も産んだら変わるかなと思っていたけど、全然変わらなかったんです。 子供の世話はやっぱりめんどくさいし、手抜きもしたいし、泣き声はうるさいし。そういう意見が全然表に出ていなかったので、私がそれを言うことで世の中の人のハードルを下げたかったんですよね。千秋ができるんだから私もできるだろう、って踏み台みたいに思ってくれたらいいなって」 娘が幼稚園に入る前に離婚したが、子供の行事には前の夫と2人で参加し、週に1回はパパのところに娘を泊まりに行かせ、誕生日には親子3人でディズニーにも行く。「じゃあなんで離婚したんだ」「復縁間近か」などと騒がれることもあった。 「日本って、夫婦仲が悪くても離婚することが一番だめで、離婚したら母親が一人で頑張るみたいな風潮があるじゃないですか。でも、離婚した父親との関係を切る必要はないと思っていたんです。娘は一緒にいるママも、別の家に住んでるパパも好きなまま育つし、離婚してもいいことだらけじゃんって。ママ友の中にも『千秋ちゃんのやり方を見て私も離婚を決意できた』って言ってくれた人が何人もいました」
常識にとらわれずに自分がいいと思うほうを選択する。いつもそれができているから、小さなことで思い悩んだり、我慢をしたりする必要がない。他人にどう思われるかを気にしがちな日本人の多くには、彼女のような生き方がまぶしく映る。 「最初に何か言うとたたかれて、母親らしくないとか言われるんですけど、それも織り込み済み。私はたたかれ役でよくて、誰かが大きい声で言えばちょっとずつわかってくれるかなって。『円満離婚』も最初は珍しがられたけど、今では普通になりましたよね。 私だってなるべく嫌われたくないけど、我慢するくらいなら嫌われたっていい。嫌われるのを恐れて自分の考えを曲げたり、言いたいことをのみ込んだりする方がストレスだと気付いたんです。全員には勧めないけど、私にはそのほうが合っているんです」 歌のほかにもゴルフ、麻雀、旅行、パクチーの克服……やりたいことは尽きない。 「おばあちゃんになったらハワイとかの老人ホームに行って、おじいちゃんたちにめっちゃモテモテになりたい。結婚も何回したっていい。老人ホームのなかでこのおじいちゃんと結婚して、また別のおじいちゃんと結婚して、とかもあるかもしれないですよね」 ポケビのボーカルとして声高らかに「もしも生まれ変わってもまた私に生まれたい」(『YELLOW YELLOW HAPPY』)と歌っていたあのときの少女は、今も胸を張って自分の道を歩き続けている。 千秋(ちあき) 10月26日生まれ、千葉県出身。日本のタレント、歌手、声優、デザイナー、文筆家、作詞家。活動休止中の音楽ユニット「ポケットビスケッツ」のボーカル。6月3日にソロとしては約20年ぶりとなる新曲『GREEN FLASH』をリリース。各デジタルサイトで配信中。