日韓「冬の時代」回帰を懸念 尹大統領の求心力低下不可避、身構える日本
日本政府は、韓国情勢に懸念を強めている。尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が非常戒厳を約6時間で解除したとはいえ、弾劾訴追案が国会に提出されたことから尹政権の求心力低下は避けられず、尹氏の対日政策を「親日屈辱外交」と批判してきた野党側が政権を奪取する事態になれば、日韓関係に再び「冬の時代」が訪れるからだ。 【写真】非常戒厳が宣布され、韓国国会の庁舎に入る韓国軍兵士 「特段かつ重大な関心をもって注視している」。石破茂首相は4日、韓国情勢について首相官邸で記者団に問われ、険しい表情で語った。 尹氏は韓国国内で批判があっても日韓関係改善に取り組む姿勢は崩さなかった。いわゆる徴用工問題では、解決策を示して原告側に理解を求めた。日本の政府・与党内には「尹氏の関係改善への姿勢は信頼できる」(日韓議員連盟関係者)との評価もあった。 また、尹政権下では日韓防衛当局間も関係改善が進んだ。核・ミサイル開発を進める北朝鮮をにらみ、米国を加えた日米韓3カ国の安全保障協力が深化。昨年12月には北朝鮮のミサイル発射情報を3カ国で即時共有する仕組みが始動した。 ただ、尹政権の求心力回復が見込めないことで、日本政府関係者の間では韓国の「先祖返り」への警戒感が広がる。反日路線をとった文在寅前政権は慰安婦問題の「不可逆的な解決」を確認した日韓合意をほごにし、日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を通告。日韓関係は過去最悪レベルに冷え込んだ。 北朝鮮とロシアが軍事連携を強めるなど東アジアの安保環境が一層厳しくなる中、日韓・日米韓の安保協力は重要性を増している。多国間よりも2国間協力を好むトランプ米次期政権への移行に尹氏の退場が重なれば、3カ国の協力枠組みは不安定化する懸念がある。 政府高官は「尹氏と(日本政府)は互いに解決できるところは解決しようというスタンスだった。日韓関係の安定を米国も望んでいた。これが変化するとつらい」とつぶやいた。(小沢慶太、大島悠亮)