日本は“マナー大国”?謎マナー乱立の理由をマナー講師に聞いた
マナーはコミュニケーションツール
NPO法人日本マナー・プロトコール協会理事長の明石伸子さんはマナーの本質を「人とのコミュニケーションを円滑にするためのコツのようなもの」と話す。明石さんは、CA、役員秘書、企業コンサルタントなどを経て、数多くの政治家、企業家などのイメージトレーニングも手掛けてきた。しばしばマナー講師が“謎マナー”の元凶とされることについても「実像とは違ったマナー講師のイメージが社会の一部に浸透していて、それはとても残念」と話す。 「皆さん考え方が違うように、マナーもそれぞれ。ただ、そこに知識が足りないと、相手への配慮を欠いてしまうこともある。知識を踏まえた上で上手に心を伝えられるようになりましょうということで、マナーについての考え方を整理してお伝えしています」
では明石さんは謎マナーについてどう思うのか。 「マニュアルが先行することで、目の前にいる方への配慮がおろそかになるのは本末転倒です。『ビールのラベルを上に』という謎マナーも、例えばそのビール会社の方への接待であれば敬意を示すことになるかもしれませんが、一般的には、心を込めて注いでいるという態度があれば、ラベルの向きはどうでもいいこと。ローカルルールと本来のマナーとを混同しないことです」 明石さんは、「マナーも時代の転換期に直面している」と言う。 「コロナ禍では、もっと大きな変化が起きています。欧米ではスタンダードだった握手やハグができなくなり、密なコミュニケーションが良しとされていたものが、全部覆ってしまった。新しい環境ができると、それに応じて必要な配慮が生まれます。今の時期はなるべく言葉を発さないなかでも、きちんと理解をしたり、敬意を伝えることを気をつけないといけないのかな、と考えています」 かつて、ビジネス上で「メール」はマナー違反とされた時期があった。「メールでは重要な文書をやりとりしてはならない」「電話で話すほうが丁寧だ」という認識があったためだ。今では不可欠なツールだが、それも新たなメッセージングアプリへとシフトしつつある。 「時代の変化によって、マナーの基準も変わります。メールや、現在のオンラインについてもそう。新しいものが生まれると、どうしても一定期間は試行錯誤されることがあります。そこに、謎マナーが生まれやすくなる。でもそのうちに、それらも淘汰されて、形が固まってくるんです」